藤村式建築

藤村式建築（ふじむらしきけんちく）

藤村式建築は、明治時代初期の山梨県で、県令の藤村紫朗の指導のもとに生まれた洋風の公共建築およびその様式を指します。1877年、イギリスの外交官アーネスト・サトウが甲府を訪れた際に記したように、当時の山梨県は洋風建築が盛んに建設されており、町の規模に対して最も多くの西洋建築が存在する地域であるとされています。藤村の県令在任中に建築された洋風の建物は100件以上にのぼると考えられており、各村には必ず1つは存在するほど普及していました。昭和に入ると、「藤村式」と親しみを込めて呼ばれるようになり、建築様式に個人名が冠されることは極めて珍しいです。

歴史的背景

藤村は、建設に情熱を注いだことから「土木県令」として知られるようになります。彼のキャリアは、1870年に京都に小参事として赴任し、小学校教育の確立に寄与したことから始まります。この時期、京都では前例のない柳池学校が完成し、藤村もここで教育制度に強い関心を持つようになりました。次の大阪での任務では、神戸のコロニアルスタイルに触発された擬洋風建築の小学校建設を進めます。

1873年に山梨県に権令として赴任した藤村は、なおも洋風建築に力を入れ、学校建築を推進しました。彼の手法として採用された断髪令は、髪結いの費用を学校建設に充てるためのものであり、結果として琢美学校や梁木学校が1974年に完成しました。この事例は、全国的にも早い時期における教育施設の建設として注目されますが、藤村はその後も続々と多くの公共施設を建てました。これには、県庁、師範学校、郡役所、病院といった様々な施設が含まれます。

建築様式の特色

藤村式建築は、擬洋風建築の一種ですが、その特徴として立方体に近いプロポーションと、二層のベランダを持つ点があります。特に、塔を備えた学校建築は「インク壺学校」として広く知られ、京都や大阪の擬洋風校舎、さらに神戸の洋館から影響を受けているとされています。また、1877年にはアメリカの教育に関する書籍を翻訳し出された「学校建築法」が、非常に大きな影響を与えました。

建設に携わった地元の棟梁としては、小宮山弥太郎や松木輝殷らが挙げられ、彼の導きのもと、多くの建物が誕生しました。1887年に藤村が愛媛県に転任すると、藤村式の建築も終焉を迎えますが、小宮山はその後も愛媛や静岡で藤村式の影響を拡大しました。

現存する藤村式建築の例

現在でも、藤村式の建築物は数多く存在しており、地域の文化財として大切に保存されています。これには、旧田中銀行博物館や博物館明治村、そして道の駅花かげの郷まきおかなどが含まれており、観光資源としても重要視されています。藤村式建築の魅力は、明治時代の洋風と和風の融合が見られるところにあります。連綿と残るこれらの建物は、地域の歴史を語りかけており、訪れる人々に豊かな学びや体験を提供しています。

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