藤林益三

藤林 益三の生涯

藤林益三（ふじばやし えきぞう）は、1907年8月26日に京都府の五ヶ荘村田原にて生まれました。彼の家庭は、まゆから糸を生産するという独自の事業を営んでいましたが、父の死とともに家業は衰退し、3歳の時に母と姉と共に叔父の家に引き取られることになります。

彼は郷里の篤志家の支援を受けて教育を受け、最終的には東京帝国大学法学部を卒業しました。1931年に卒業した彼は、その後、企業法務の弁護士として活躍しましたが、やがて司法の場へ進出し、1970年には最高裁判所の判事に就任しました。

最高裁長官就任と影響

1976年、藤林は最高裁判所長官に就任し、弁護士出身者として初めてこの地位に就くことになりました。彼は68歳9ヶ月という高齢での就任で、歴代最高齢の長官として名を刻みました。彼の在任中は、特に憲法に関する問題に対して強い意見を示し、特に無教会主義キリスト教徒としての信仰は、彼の法律判断にも色濃く反映されました。

特に「津地鎮祭訴訟」においては、藤林は合憲派が多数を占める中、異例として反対意見を提出し、政教分離の原則を強調しました。この判決に対する執筆に彼が特別な情熱を注いだことは、後の回想で明らかになっています。

ロッキード事件とその後

1976年2月に発覚したロッキード事件では、藤林は最高裁長官としてアメリカ側証人の刑事免責を保証する方針を全会一致で決議しました。この決定は具体的な証拠価値は事件担当裁判官が判断することとし、彼が最高裁の運営において重要な役割を果たしたことを示しています。しかしながら、1995年の最高裁判決では、この刑事免責に対して否定的となり、議論が続いています。

また、1977年には司法修習生の国籍条項に関して重要な変更を行い、外国人の採用方針を示しました。これにより、法曹界における多様性を促進する礎を築きました。

藤林の業績と著作

藤林は法曹界の発展に寄与するだけでなく、多くの著作を残しました。これには「貸倒れ対策一問一答」や「銀行員の法律あ・ら・かると」などが含まれ、法律の実務に役立つ情報を提供しました。また、「一法律家の生活と信仰」や「法律家の知恵」では彼自身の信仰心や法律に対する考え方が語られています。

2007年4月24日、藤林は心不全で亡くなりました。享年99歳。彼の人生は、法曹界と社会における重要な足跡を残しており、影響力を持つ存在として記憶され続けています。藤林益三の遺した言葉や業績は、現代の日本においてもなお、法の精神をよく表しています。

もう一度検索