藤田流

藤田流の概要

藤田流（ふじたりゅう）は、能楽における笛方の一流儀であり、特有の演奏スタイルで知られています。元は名人笛彦兵衛の門人であった馬淵頼元に由来し、さらにその弟子である藤田清兵衛重政がこの流儀を成立させました。この流儀の設立によって、江戸時代以降、名古屋が重要な中心地となった背景があります。

起源と発展

藤田流の創始者である藤田清兵衛重政は、近衛家に仕えながら芸を磨き、禁裏における笛役者として活躍しました。彼の師であった下川丹波守重次や、さらに遡ると檜垣本彦兵衛に至る濃厚な系譜が、この流儀の確立に寄与しています。藤田流の根元をたどると、すべての流儀は檜垣本座に行き着きます。少なくとも三つの流儀がこの檜垣本彦兵衛から分かれている点も興味深いです。

独特の演奏スタイル

藤田流の演奏スタイルは、他流派とは異なる特徴を持っています。譜やアシライを吹くタイミングが独自であり、力強く豊かな息で笛を吹くスタイルが際立っています。特に派手なトリル風の装飾音使いが顕著で、聴衆に強い印象を与えます。能楽協会に登録された役者は、すべて名古屋に在住しており、その影響は現在においても続いています。

歴史的背景と族譜

藤田流の創始者、清兵衛重政は1614年に丹波の出石に生まれ、13歳のときに母方の叔父である禅僧・沢庵和尚に育てられました。信尋公に仕官し、笛の技術を磨きながら、近衛家のために優れた演奏を行いました。後に信尋公は清兵衛に秘伝書と名管を授け、それが流派の存続にさまざまな形で貢献しました。

1629年には、尾張徳川家の初代義直公の要請により、藤田清兵衛が尾張へ移籍しました。この移転によって、藤田流は尾張地域での活動を本格化させ、以降11代にわたる家元がその伝統を継承していくことになります。

藤田流の宗家代々

藤田流の家系は、流祖の藤田清兵衛重政から始まり、歴代の家元は以下のようになります：

• - 7世: 藤田重村
• - 8世: 藤田六郎兵衛重政（重村の養子）
• - 9世: 藤田清兵衛重孝（六郎兵衛の五男）
• - 10世: 藤田六郎兵衛重明（小鼓幸清流田鍋惣太郎の次男、重孝の養子）
• - 11世: 藤田六郎兵衛重昭（重明の孫）

これらの家元たちは、それぞれが藤田流の精神を受け継ぎ、担ってきました。

参考文献

• - 『能楽全書』（東京創元社）
• - 『能・狂言事典』（平凡社）
• - 『岩波講座 能・狂言』（岩波書店）

藤田流の歴史とその独自の演奏スタイルは、能楽の中でも特に重要な位置を占め、現代の演者にも大きな影響を与えています。

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