藤高俊彦

藤高 俊彦（ふじたか としひこ）氏は、1959年4月18日生まれの元社会人野球選手です。右投げ右打ちの投手として活躍しました。

高校野球時代

滋賀県の伊香高校に進学した藤高氏は、3年生だった1977年に才能を開花させます。同年の選抜高等学校野球大会に出場し、1回戦で桜美林高校に敗れはしたものの、その投球は多くの注目を集めました。夏の全国高等学校野球選手権大会に向けた県予選では快進撃を見せ、準決勝では長浜商工を相手にノーヒットノーランを達成するという圧巻の投球を披露しました。しかし、決勝で比叡山高校に惜敗し、甲子園出場をかけた福滋大会への進出は叶いませんでした。

社会人野球での輝かしい実績

高校卒業後、藤高氏は社会人野球の強豪チームである新日本製鐵広畑に入社しました。ここでは、西村基史投手とともにチームの二本柱として活躍します。

特に1981年の都市対抗野球大会では、その実力を遺憾なく発揮しました。この大会で1完封、1完投を含む3勝を挙げ、チームを準決勝進出に導きます。準決勝では東芝と対戦しましたが、相手の継投策の前に打線が封じ込まれ、惜しくも決勝進出はなりませんでした。

1983年にも都市対抗野球大会でチームは準決勝まで駒を進めます。この大会でも藤高氏はリリーフとしてマウンドに上がり、東芝の池田親興投手や川端順投手といった好投手たちと投げ合いますが、再び涙をのむ結果となりました。

同年9月には、ロサンゼルスオリンピックのアジア予選を兼ねたアジア野球選手権の日本代表に選出され、国際舞台も経験しました。さらに同年10月の社会人野球日本選手権でも準決勝まで進出しましたが、住友金属に敗れ、惜しくも決勝進出はなりませんでした。

藤高氏はその後も長きにわたり新日本製鐵広畑のエースとして活躍し続け、都市対抗野球大会には10年連続出場を含む通算13回出場するなど、アマチュア球界で確固たる地位を築きました。

プロからの指名と異例の入団拒否

藤高氏の経歴の中で特筆すべきは、プロ野球ドラフト会議における出来事です。

1981年のドラフト会議で、藤高氏は西武ライオンズから5位指名を受けました。加えて阪急ブレーブスからも指名され、両球団からの重複指名となりました。抽選の結果、西武ライオンズが交渉権を獲得しましたが、藤高氏本人はプロ野球への入団を拒否するという選択をしました。これは、当時の西武ライオンズにとって初めてのドラフト指名選手の入団拒否という異例の事態でした。

藤高氏は、ドラフト会議が行われる以前からプロ入りしない意向を示しており、その理由として具体的に3点を挙げていました。まず、「身体が硬く、怪我をしやすい体質であること」。次に、「現時点の技術ではプロの世界で通用するレベルではないと感じていること」。そして、「自身の性格がプロ野球選手には向いていないと考えていること」でした。

当時、西武の担当スカウトとして藤高氏の才能に早くから注目していた浦田直治氏は、何とか説得を試みました。高齢化が進んでいた西武の投手陣の状況を説明したり、ドラフト1位指名選手と同等の契約金を用意すること、さらには高校卒業よりも会社での出世が難しい可能性を示唆するなど、様々な言葉で入団を促しました。また、引退後には西武グループ内の企業への就職を斡旋するなど、身分保障についても提示しましたが、藤高氏のプロ入りしないという強い意思が変わることはなく、最終的にプロ野球の門を叩くことはありませんでした。

引退後

現役引退後、藤高氏は長年所属した新日本製鐵広畑でコーチを務め、後進の指導にあたりました。プロの道を選ばずとも、社会人野球において傑出した成績を残し続けた投手として、その名前は記憶されています。

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