藪内流

藪内流（やぶのうちりゅう）とは

藪内流とは、日本の茶道における代表的な流派の一つであり、古儀茶道藪内流とも称されます。この流派は、利休時代に影響を受けた茶風を色濃く残しており、特に浮薄さを戒める姿勢が特徴です。藪内流の茶道は、紹鴎や利休の侘び茶に、織部の武家茶の影響を受けつつ発展してきました。

家元と庵号

藪内流の家元である藪内家は、京都市の下京区に位置しており、このため上流（三千家）に対して下流とも呼ばれています。藪内流を象徴する茶室は燕庵（えんなん）であり、これは織部によって考案された相伴席付きの三畳台目の茶室です。また、藪内流には財団法人としての「薮内燕庵」や、同門組織「竹風会」が存在しています。

歴史的背景

藪内流の創始者である藪内家の遠祖は、藪宗把という人物で、足利義政の同胞の一人でした。藪内家の初代、藪内剣仲は武野紹鴎の弟子であり、千利休とも親しい関係にありました。彼は利休の教えを受け継いだ上で、利休の媒酌で古田織部の妹を娶って結婚しています。利休が豊臣秀吉に重用されたのに対し、剣仲は洛北に隠れて茶道に専念していたとされています。当時、彼はしばしの時間、聚楽第で茶堂を務めたこともありました。

2代目の真翁は、寛永11年（1634年）から西本願寺の手厚い庇護のもと、茶道師家として活動を開始しました。この時期、藪内家は西本願寺によって与えられた土地に根付くこととなり、真翁は利休の養子である千少庵とも親交を深めました。

中興の祖と藪内流の精神

5代目の竹心は「藪内家中興」と称され、千家の中興と同時期に活躍しました。彼は豊富な町人を受け入れ、藪内流を華やかに変貌させましたが、同時に町人文化に批判的な立場もとり、利休時代の茶道への回帰を主張しました。竹心の言葉「正直清浄 礼和質朴」は藪内流の精神を象徴しています。

藪内流は、町人文化との交わりを避けつつ、武家との関係を重視し、古儀に徹しました。幕末には社会情勢の激変に見舞われ、元治元年（1864年）には家屋が全焼するという試練もありましたが、真翁以来の庇護者である西本願寺の支援により、迅速に復旧しました。

現代の藪内流

維新後の藪内流は、他の流派同様、困難な時期を経験しましたが、そこから立ち直り現在に至ります。藪内家を象徴する燕庵は、伝承を受けた者のみが忠実に再現することが許されており、古い写しのひとつは現在に残されています。このように、藪内流はその伝統を守りつつ、時代に対応し続けています。

もう一度検索