蘇生措置拒否

蘇生措置拒否（そせいそちきょひ）について

蘇生措置拒否とは、患者自身やその家族の希望に基づいて、心肺蘇生措置（CPR）を行わない決定を指します。この考え方は尊厳死の理念と通じており、特に癌の末期や老衰、救命の可能性がないと判断された患者に対して適用されます。この選択は、患者に対するQOL（生活の質）の向上を目指すものであり、その根底には患者とその家族の苦しみを和らげる意図があります。

背景と意義

蘇生措置が不要と考えられる場合、医療者は心肺停止状態において、昇圧剤や心臓マッサージ、気管挿管、人工呼吸器の装着といった蘇生処置を行わないことが求められます。回復の見込みがない患者に対し、一時的に命を延ばすことが病気や苦痛を加えるだけである場合も多いため、この選択は非常に重要です。

患者が治癒する見込みが薄い状態で医療行為が行われることは、必ずしも望ましい結果をもたらさないことがあります。例えば、治療によって著しい痛みや体力の消耗が引き起こされることがあり、むしろ安らかな最期を迎えられない選択となることも考えられます。従って、蘇生措置拒否は患者の苦痛を軽減し、最後の瞬間を家族と共に過ごすための大切な選択肢となります。

DNRオーダーの実施

DNR（Do Not Resuscitate）オーダーは、医療者が患者やその家族と十分なコミュニケーションを行った上で作成されます。この際、医療者は蘇生措置拒否の意義や方法について丁寧な説明を行います。また、患者の意志が確認できない状況においては、意思決定を代行する代理人が必要です。こうした確認がなされることで、患者の意思が尊重された医療が実現します。

DNRオーダーの内容は、どの医療行為を控えるかを明確に記載する必要があります。口頭での合意ではなく、必ず文書化することで、意思の確認が確実になります。これにより、医療者は患者の意志に基づいた適切な対応が可能となります。

家族間の意見の調整

患者が自らの意思を表現できなくなった際には、家族間で意見の不一致が生じることもあります。医療者はこうした状況にも配慮し、必要に応じて蘇生措置を適用することを考慮しなければなりません。これによって、患者の意志が最大限尊重される医療環境を構築することが求められます。

脚注と参考文献

このように、蘇生措置拒否は単なる医療行為の拒否ではなく、患者の尊厳を守り、穏やかな最期を迎えるための重要なアプローチです。尊厳死やターミナルケアといった関連項目について知識を深めることも、この理解を深める手助けになるでしょう。

参考文献

• - 柏木哲夫他監修・林彰敏他偏 「死を看取る1週間」 医学書院 2002年

関連項目

• - ターミナルケア
• - 尊厳死
• - 医療識別票

もう一度検索