蛸ノ浦貝塚

蛸ノ浦貝塚：縄文人の生活を今に伝える貴重な遺跡

岩手県大船渡市赤崎町に位置する蛸ノ浦貝塚は、縄文時代前期から中期にかけて（約5,500～4,000年前）の貝塚遺跡です。大船渡湾を見下ろす標高35mの丘陵上に位置し、その規模は国内最大級を誇ります。1934年に国の史跡に指定されました。

最大2mに達する貝層

蛸ノ浦貝塚の最大の特徴は、厚さ2mにも達する貝層です。この貝層は、縄文時代の人々が食料としていたアサリやマガキなどの貝類が、長年にわたって堆積したものです。貝層の中からは、マグロやタイなどの魚骨、シカやイノシシなどの哺乳類の獣骨も発見されており、当時の人々の食生活を知る上で重要な手がかりとなっています。

発掘調査で明らかになったこと

1980年の発掘調査により、丘陵北側の平地部分には遺構・遺物がほとんど存在しないことが判明し、史跡指定の一部が解除されました。現在、史跡として指定されているのは、貝塚のある丘陵地と丘陵北麓の平地部分です。

貝塚からは、屈葬人骨や住居跡のほか、石器や縄文土器、骨角器など、当時の人々の生活用具が多数出土しています。特に注目されるのは、釣り針などの漁撈用具の発見です。これらの発見から、蛸ノ浦貝塚が漁労に携わる人々の集落であったと考えられ、当時から豊かな海産物の恵みを受けていたことが伺えます。

縄文人の知恵と工夫

蛸ノ浦貝塚は、縄文時代の人々が自然と共生しながら、知恵と工夫を凝らして生活していた様子を今に伝える貴重な遺跡です。貝塚に残された貝や骨、土器などの遺物は、当時の人々の食生活や文化、技術を知る上で重要な手がかりとなります。また、屈葬人骨の発見は、当時の人々の埋葬方法や死生観を考察する上で貴重な資料となります。

蛸ノ浦貝塚は、私たちの祖先がどのように生きていたのかを教えてくれる、歴史の証人とも言えるでしょう。この遺跡を訪れることで、縄文時代の人々の暮らしに思いを馳せ、彼らの知恵と工夫に触れることができるでしょう。

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