蛸配当

蛸配当（たこはいとう）について

蛸配当とは、株式会社などが本来の分配可能額が不足しているにもかかわらず、帳簿を改ざんしたりして見かけ上の利益があるように見せかけ、過剰に株主に配当を行う行為を指します。この用語は、空腹のタコが自らの足を食べるという俗説から名付けられたもので、法的には違法配当と呼ばれます。

法律における位置づけ

日本の商法（会社法）では、違法配当は厳しく規制されています。株式会社においては、有限責任社員のみが存在するため、会社の財産は債権者に対する責任の源泉となります。そのため、会社の資本が流出することを防ぐ必要があります。商法は万が一、違法配当が実施された場合には、その金額を会社に返還させるなどして、会社財産の流出を阻止します。また、違法配当を実施した者には罰則も設けられており、資本保護の観点から厳格な規制がなされています。

重大な変更があったのは2005年（平成17年）に施行された会社法です。この法律では、利益配当という概念が剰余金の配当へと変更されました（453条以下）。それでも、蛸配当や違法配当に対する基本的な規制枠組みは維持されており、株式会社だけでなく持分会社においても配当規制が適用されます（623条）。

民事法上の効果

法律改正前の旧商法では、違法配当は無効と解釈されていました。そのため、違法配当を受け取った株主に対して、企業は不当利得を理由に配当金の返還を求めることが可能でした（民法703条、704条）。さらに、会社債権者は違法配当の返還を株主に直接請求する権利も持っていました（旧商法290条2項）。とはいえ、実際には多くの株主はその配当が違法であることを知りませんし、公開株式を持つ会社では株主数が多く、個別に返還請求を行うことは現実的ではありません。このため、違法な配当を行った取締役に対して、会社がその金額を弁済する責任を課す規定が設けられています（旧商法266条）。この場合、違法配当を受け取った株主が悪意であったとされる場合には、取締役がその株主に求償をすることができます（旧商法266条の2）。

差異がある現在の会社法

現在の会社法では、違法配当が実施された場合でも、民事法上の効果を持つこととなります。剰余金に関する責任は462条に記載されています。一方、善意の株主の場合、業務執行者の求償が法的に制約される（463条1項）こともあります。株式会社の債権者は、株主に対して交付された金銭やその帳簿に記載された額が債権者の債権を超える場合、その額に相当する金銭の支払いを請求できるとされています（463条2項）。

罰則の規定

違法配当に対する罰則も設けられており、その内容は「会社財産を危うくする罪」とされ、5年以下の懲役または500万円以下の罰金が科されることがあります（963条5項2号）。

投資家への警告

蛸配当を行っている企業は、利益が得られていない実態にもかかわらず、配当金を持続する可能性があります。このため、株価が下落しても高い投資利回りが示され、外見上は魅力的に見えることがあります。しかしながら、そのような企業は突然無配になったり、株主優待を廃止したりするリスクも高く、結果として株価が急落し、投資家はより大きな損失を被る可能性があります。そのため、投資の際には注意が必要ですと、ZUUオンラインでは警告しています。

関連項目

• - 配当
• - 粉飾決算
• - ポンジ・スキーム
• - 毎月分配型投資信託

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