蝙蝠と蛞蝓

蝙蝠と蛞蝓

短編推理小説『蝙蝠と蛞蝓』は、著者横溝正史の代表的な作品で、金田一耕助シリーズの一部として位置づけられています。本作は昭和22年に探偵小説誌『ロック』に掲載され、その後も多くの読者に親しまれています。

物語の背景

舞台は、戦後間もない日本のあるアパートです。主人公・湯浅順平は、自身の隣に引っ越してきた探偵・金田一耕助に不快感を抱いていました。特に、金田一の容姿が自分と酷似していることが彼の苛立ちを募らせます。また、アパートの裏に住む女性・お繁への興味も隠せません。順平はお繁を殺し、その罪を金田一に着せるというとんでもない脚本を考えますが、すぐにその考えを忘却してしまいます。

殺人事件の発生

しかし、数週間後、実際にお繁が殺害される事件が発生します。順平は主犯として捜査の対象となり、彼の寝間着には血痕が付着しており、凶器は彼の部屋から発見されるという状況に置かれます。警察の取調べが続く中で、順平は思いもよらない形で次第に追い詰められていきます。

事件の真相

取調べが4、5日過ぎたころ、金田一が事件の捜査に加わります。彼は順平が日課として行っていた電気の修繕作業を知っており、その際に持たされた電気の笠が金魚鉢に似ていたことから事件の詳細に迫ります。金田一は、順平の指紋が現場に残された経緯が、従姉妹のお加代による陰謀であることを突き止めます。

お加代の関与

お繁は心臓をえぐられ、体には絞殺の痕があったことから、事件の背後には二人以上の犯人がいると金田一は考えます。お繁が持っていた金を狙ったお加代が、従弟の紅吉と共謀して順平に濡れ衣を着せる計画を実行したのです。この計画の鍵となるのが、順平が以前に書いた小説の下書きでした。

結末と評価

最終的に、金田一は真実を明らかにし、湯浅は無実を証明します。本作は、推理小説の一つとして多くの人に愛され続けており、登場人物たちの心理描写や緊張感溢れるストーリー展開が評価されています。また、テレビドラマとしても映像化されており、その人気は衰えることがありません。

登場人物

1. 金田一耕助: 私立探偵で、順平の隣人。事件の真相を追う。
2. 湯浅順平: アパートの住人で、作品の語り手。
3. お加代: アパート経営者の姪で、順平に好意を寄せられている。
4. 山名紅吉: 順平の友人で、アパートの住人。
5. お繁: 裏に住む女性で、事件の犠牲者。
6. 剣突剣十郎: アパート経営者で、お加代の伯父。

このように『蝙蝠と蛞蝓』は、横溝正史の魅力が存分に詰まった短編推理小説であり、推理小説ファンにはぜひとも読んでいただきたい一作です。

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