蠍団とどめの一撃

蠍団とどめの一撃 (Sting In The Tail)

概要

ドイツが生んだ世界的なヘヴィメタルバンド、スコーピオンズが2010年に発表した、通算17枚目となるスタジオ・アルバムです。本作は、2007年の前作『蠍団の警鐘（Humanity: Hour I）』からおよそ3年ぶりに制作されたオリジナル作品としてリリースされました。

アルバムの邦題「蠍団とどめの一撃」が示唆するように、当初バンド側は本作を最後のスタジオレコーディング作品と位置づけ、リリースに伴うワールド・ツアーをもって長きにわたる活動に終止符を打つ意向であることを表明していました。しかし、この「引退宣言」は後に撤回され、スコーピオンズはその後も新作アルバムの制作や精力的なツアー活動を現在に至るまで継続しています。結果として、本作は彼らのキャリアにおける重要なターニングポイントとなりつつも、最終章とはなりませんでした。

本作は、スコーピオンズが長年培ってきたハードロック、ヘヴィメタルのエッセンスを凝縮したかのような力強いサウンドが特徴です。往年のファンが求める攻撃的なリフやメロディアスな要素に加え、円熟味を増した表現力も感じられる作品となっています。

収録曲

本作には、以下に示す全12曲が収録されています。日本盤にはボーナス・トラックが1曲追加されています。

レイズド・オン・ロック (Raised on Rock) (3:58)
Music: Mikael Nord Andersson, Martin Hansen / Lyrics: M. Hansen, Klaus Meine
スティング・イン・ザ・テイル～蠍団とどめの一撃 (Sting in the Tail) (3:12)
Music: K. Meine, Rudolf Schenker / Lyrics: K. Meine
スレイヴ・ミー (Slave Me) (2:45)
Music: R. Schenker / Lyrics: K. Meine, Matthias Jabs, Eric Bazilian
ザ・グッド・ダイ・ヤング (The Good Die Young) (5:14)
Music: R. Schenker, Christian Kolonovits / Lyrics: K. Meine
ノー・リミット (No Limit) (3:23)
Music & Lyrics: K. Meine, R. Schenker, E. Bazilian
ロック・ゾーン (Rock Zone) (3:17)
Music: K. Meine, M. N. Andersson, M. Hansen / Lyrics: K. Meine
ローレライ (Lorelei) (4:32)
Music: R. Schenker, Fredrik Thomander, Anders Wikström / Lyrics: K. Meine, E. Bazilian, F. Thomander, A. Wikström
ターン・ユー・オン (Turn You On) (4:23)
Music: R. Schenker, M. N. Andersson, M. Hansen / Lyrics: K. Meine
レッツ・ロック (Let's Rock) (3:20)
Music: K. Meine, R. Schenker, E. Bazilian / Lyrics: K. Meine, E. Bazilian
スライ (SLY) (5:16)
Music: K. Meine, R. Schenker / Lyrics: K. Meine
スピリット・オブ・ロック (Spirit of Rock) (3:42)
Music: R. Schenker, E. Bazilian / Lyrics: K. Meine, R. Schenker, E. Bazilian
ザ・ベスト・イズ・イェット・トゥ・カム (The Best Is Yet to Come) (4:32)
Music: E. Bazilian, F. Thomander, A. Wikström / Lyrics: R. Schenker, E. Bazilian, F. Thomander, A. Wikström

日本盤ボーナス・トラック
サンダー・アンド・ライトニング (Thunder and Lightning) (4:33)
Music: R. Schenker, K. Meine, C. Kolonovits / Lyrics: K. Meine

収録曲には、バンドの代表的なソングライターであるクラウス・マイネやルドルフ・シェンカーに加え、外部の作曲家・作詞家も多く関わっており、楽曲のバリエーションに貢献しています。

参加ミュージシャン

アルバムの制作には、当時のスコーピオンズのレギュラーメンバーに加えて、ゲストミュージシャンも参加しています。

スコーピオンズ メンバー
クラウス・マイネ：ヴォーカルを担当。バンドの顔として力強い歌声を披露しています。
ルドルフ・シェンカー：リズム・ギターを担当。楽曲の骨格となるリフを生み出しています。
マティアス・ヤプス：リード・ギター、トーク・ボックスを担当。テクニカルかつメロディアスなソロで楽曲を彩ります。
パヴェル・マチヴォダ：ベースを担当。安定したグルーヴでバンドサウンドを支えています。
ジェイムズ・コタック：ドラムスを担当。パワフルなドラミングで楽曲に推進力を与えています。

ゲスト・ミュージシャン
* ターヤ・トゥルネン：楽曲「ザ・グッド・ダイ・ヤング (#04)」にヴォーカルとして参加しています。元ナイトウィッシュのシンガーとして知られる彼女のオペラティックな歌声が、楽曲に独特の荘厳さをもたらしています。

アルバムの位置づけ

『蠍団とどめの一撃』は、当初の意図とは異なり最終作とはなりませんでしたが、バンドの歴史において非常に重要な意味を持つ作品となりました。長年のキャリアで培ったヘヴィメタルサウンドを継承しつつ、新たな共同作業者との連携による新機軸も取り入れられています。ファンにとっては、往年の輝きを再確認させられると同時に、バンドがまだ「終わらない」ことを強く印象づけた一枚と言えるでしょう。

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