蠍団爆発!! スコーピオンズ・ライヴ

スコーピオンズ『蠍団爆発!! スコーピオンズ・ライヴ』

『蠍団爆発!! スコーピオンズ・ライヴ』、通称『Tokyo Tapes』は、ドイツが世界に誇るハードロックバンド、スコーピオンズが1978年に世に送り出した記念すべき初の公式ライブアルバムです。この作品は、彼らが初めて日本の地を踏んだ1978年4月、東京・中野サンプラザで行われた熱狂的なコンサートの模様を捉えたものであり、当時のバンドの圧倒的なライブパフォーマンスを克明に記録しています。

初来日公演の熱気をパッケージ

1978年の日本公演は、スコーピオンズにとってバンドのキャリアにおいて非常に重要なターニングポイントとなりました。当時、彼らは母国ドイツやヨーロッパでの評価を確立しつつありましたが、日本での成功、そしてこのライブアルバムのリリースが、その後の世界的なブレイクへと繋がる大きな一歩となったのです。特に中野サンプラザでのパフォーマンスは、観客の熱狂とバンドの漲るエネルギーが見事に融合し、歴史に残る一夜となりました。

ウリ・ジョン・ロート期を代表する名演

このライブアルバムは、技巧派ギタリストとして知られるウリ・ジョン・ロートが在籍していた時期の集大成とも言える内容です。彼のサイケデリックかつブルージーなギタープレイは、ルドルフ・シェンカーのソリッドなリフワークと見事なコントラストをなし、バンドサウンドに独特の奥行きを与えています。クラウス・マイネの力強くも情感豊かなヴォーカル、フランシス・ブッフホルツの安定したベース、そしてハーマン・ラレベルのパワフルなドラミングといった、当時の盤石のラインナップが最高の状態でその実力を発揮しています。

収録された楽曲は、彼らの代表曲から初期の隠れた名曲まで多岐にわたります。「イン・トランス」や「空を燃やせ」といった抒情的ながらダイナミックな楽曲から、「スピーディズ・カミング」や「暴虐のハード・ロッカー」のような疾走感あふれるナンバーまで、バンドの多様な音楽性が紹介されています。特筆すべきは、日本のファンへの感謝を込めて演奏された、滝廉太郎作曲の日本の名曲「荒城の月」のインストゥルメンタルバージョンです。叙情的なメロディをハードロックバンドが真摯に奏でるこのパフォーマンスは、日本のファンの心を強く掴み、本アルバムの大きな魅力の一つとなっています。また、ライブ終盤には「ハウンド・ドッグ」や「のっぽのサリー」といったカバー曲も披露され、彼らのルーツであるロックンロールへの敬意も感じさせます。

アルバムの構成と後のエディション

オリジナル盤は、中野サンプラザでの複数日の公演からベストテイクを選りすぐって構成されています。プロデュースはディーター・ダークス、エンジニアは吉田保が手掛け、そのクリアかつ迫力あるサウンドは、当時のライブ盤としては非常に高いクオリティを誇っています。

後にリリースされたバージョンの中には、構成に差異が見られるものもあります。例えば、2001年にリリースされたリマスター盤では、オリジナルのLPに収録されていた「暗黒の極限」が本編から外され、同日リリースの別アルバムにボーナストラックとして収録されるという変更がありました。さらに、2015年のデラックス・エディションでは、オリジナルの構成に加え、別日の公演からの未発表音源が多数追加収録されており、より包括的にこの歴史的な来日公演の全貌を知ることができるようになっています。追加された楽曲には、オリジナル盤にはなかった「ヘル・キャット」や「キャッチ・ユア・トレイン」といったウリ期の重要曲、そしてファンを驚かせた日本の国歌「君が代」のパフォーマンスも含まれています。

まとめ

『蠍団爆発!! スコーピオンズ・ライヴ』は、単なるライブ記録にとどまらず、スコーピオンズというバンドが世界的なアリーナバンドへと飛躍する直前の、最も勢いのある時期を捉えた貴重なドキュメントです。ウリ・ジョン・ロートという個性的なギタリストがバンドに与えていた影響力の大きさを感じさせると同時に、クラウス・マイネを中心としたバンド全体のポテンシャルの高さを証明しています。発表から数十年の時を経た現在も、ハードロック史におけるライブアルバムの傑作として、そしてスコーピオンズの初期を語る上で欠かせない作品として、多くの音楽ファンに聴き継がれています。

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