血と油と運河

あらすじ

1970年代初頭、日本は深刻な石油ショックに見舞われ、石油価格が急騰した。この危機的状況を打開すべく、大手商社・三星商事の社長である広崎皎介は、石油開発事業に並々ならぬ情熱を燃やす。彼は、アラビア半島、ソ連、アメリカ、インドネシアといった世界各地を奔走し、石油資源の確保に全力を尽くす。

広崎は、社内外の様々な思惑が渦巻く中で、困難な交渉や裏切り、陰謀に立ち向かう。彼の行動は、石油という資源を巡る国際的な駆け引きや、人間の欲望と野望を浮き彫りにする。

主な登場人物

広崎皎介：三星商事の社長。東大卒で、前社長をクーデターで追い落とした。55歳。会社の権力闘争の中心にいる。
広崎芳枝：皎介の20歳以上年下の後妻。社長夫人として社交界で活躍する一方、社内の顧問弁護士と不倫関係にある。
木島和子：皎介の先妻の娘。パンなどの洋食を好む。
木島宏：皎介の娘婿で秘書課長。旧姓を名乗るが、広崎家で同居している。
山川次郎：三星商事の会長。表向きは勇退とされているが、実際は広崎に社長の座を奪われた前社長。狭い会長室に不満を抱いている。
片岡金吾：三星商事の取締役で、広崎の右腕。やり手として知られる。
三橋玖美子：片岡の姪で、役員付きの秘書。片岡宛の親書を勝手に開封してしまう。
木田嘉三：皎介の公用車の運転手。
マーガレット：ショーパブのゲイボーイで、花形ダンサー。
カール・ロイド：アメリカの新聞記者。ユダヤ系の出自を持つ。
シャーリー・ヘボン：フランスの娼婦。
ソーニャ：通訳。その正体はソ連の諜報部員。
広崎信二：皎介の甥で外務官僚。駐ソ日本大使館員。
詫間夏彦：前衛画家。皎介の主治医の息子。
蒲谷数雄：三星商事の顧問弁護士。社長夫人・芳枝と不倫関係にあり、会長の山川に密会現場を目撃されてしまう。
アデリア：三星商事ニース駐在所の秘書。皎介の「現地妻」で、日仏ハーフ。皎介の子を妊娠している模様。
高山：アラビア現地法人の駐在員。皎介派閥に属し、片岡取締役の実働部隊として動く。

作品の特徴

この小説は、1970年代の石油危機という時代背景を色濃く反映し、経済小説としての側面を持ちながらも、登場人物たちの複雑な人間関係や、権力闘争、欲望といった普遍的なテーマを描いている。

作者である梶山季之は、経済界や社会の裏側を深く掘り下げ、生々しい描写で読者を惹きつける。また、国際的な政治情勢や諜報活動なども物語に組み込み、重厚なサスペンスとしても楽しめる。

出版情報

連載：1974年より『週刊読売』にて連載
単行本：1975年に集英社より刊行
文庫版：1978年に集英社文庫より刊行（ISBN 4-087-50136-1）

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