血小板減少性紫斑病

血小板減少性紫斑病（けっしょうばんげんしょうせいしはんびょう）

概要

血小板減少性紫斑病（英語: thrombocytopenic purpura）とは、血液中に含まれる血小板の数が、様々な要因によって異常に減少することを主な原因として発症する疾患群を指します。この病気は、血小板の減少に伴い、体内の様々な部位で出血が生じやすくなる「出血傾向」を示すことが特徴です。病名にある「紫斑病」は、特に皮膚の下で出血が起こり、紫色の斑点やあざ（紫斑）が現れる状態を示唆しています。

血小板の重要な役割

私たちの体内で血液が血管内を正常に循環し、生命活動を維持するためには、血液凝固や止血といった機能が適切に働くことが不可欠です。血小板は、この止血機構において極めて重要な役割を担っています。血管が損傷を受け、血液が体外へ漏れ出ようとする際に、血小板はその傷ついた部位に速やかに集まります。

集まった血小板は、互いにくっつき合い（凝集）、また血管壁のコラーゲンなどに付着する（粘着）ことによって、血栓と呼ばれる塊を形成します。この血栓が血管の損傷部位を塞ぐことで、出血を効果的に食い止めます。このように、血小板は血管の破綻による出血を防ぎ、体内の血液量を一定に保ち、恒常性（ホメオスタシス）を維持するために欠かせない要素なのです。

血小板減少による影響と症状

血小板の数が正常なレベルよりも著しく減少すると、この重要な止血機能が十分に果たせなくなります。その結果、普段なら問題にならないような些細な刺激や、時には全く原因が分からない状況でも、容易に出血が生じるようになります。

血小板減少性紫斑病で見られる出血症状は多岐にわたります。最も特徴的なのは、皮膚の下での出血です。非常に小さな点状の出血斑（点状出血）や、より大きな紫色のあざ（紫斑）が体の様々な部位、特に下肢などに現れやすくなります。これは、血管の壁が脆弱になったり、日常的な微細な外力によって血管が傷ついたりした際に、血小板による迅速な止血ができないために起こります。

皮膚症状に加えて、体の内側でも出血は起こり得ます。例えば、鼻の粘膜や歯茎からの出血、口の中の粘膜にできる血豆などが見られることがあります。また、消化管からの出血によって、便が黒くなる（タール便）あるいは血が混じる、尿路からの出血によって尿が赤くなる（血尿）といった症状が現れることもあります。

さらに深刻なのは、脳や肺、消化管などの重要な臓器内で出血が起こるリスクが高まることです。特に脳内での出血（脳出血）は、生命に関わるような重篤な合併症を引き起こす可能性があり、血小板減少性紫斑病における最も危険な事態の一つとされています。

主な分類

血小板減少性紫斑病は、その病態を引き起こす原因やメカニズムの違いによって、いくつかの種類に分類されます。代表的なものとしては、以下の二つが挙げられます。

• - 特発性血小板減少性紫斑病（ITP: Idiopathic Thrombocytopenic Purpura）

原因が特定できない、あるいは自己免疫の異常によって自身の血小板を攻撃・破壊してしまうことで血小板が減少する病態です。

• - 血栓性血小板減少性紫斑病（TTP: Thrombotic Thrombocytopenic Purpura）

全身の細い血管の中で血栓（血の塊）ができやすく、その過程で血小板が消費されて減少する病態です。特定の酵素（ADAMTS13）の活性低下などが原因とされます。

これらの分類された病態は、いずれも血小板の減少という共通の病態を示しますが、その根本的な原因や進行の仕方が異なるため、診断や治療方針もそれぞれに異なります。

まとめ

血小板減少性紫斑病は、血小板の減少という病態を通じて、全身に出血傾向をもたらす疾患群です。皮膚の紫斑から始まり、内臓出血や脳出血といった重篤な合併症に至る可能性もあるため、その兆候に気づき、速やかに医療機関を受診することが非常に重要です。適切な診断に基づいた治療によって、出血リスクを管理し、生命予後を改善することが目指されます。

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