行動活性化

行動活性化（Behavioral Activation, BA）とは

行動活性化（Behavioral Activation, BA）は、日常生活の中で喜びや達成感を得られるような行動を増やしていくことで、より充実した生活を送ることを目指す心理療法です。認知行動療法（CBT）の行動療法に分類され、第三世代のCBTの一つとしても位置づけられています。特に、うつ病の治療において、その有効性が広く認められている心理療法の一つです。

行動活性化の概要

世界保健機関（WHO）のmhGAPマニュアルでも、うつ病に対する推奨される心理療法の一つとして紹介されています。行動活性化のアプローチは、「ACTION」という頭字語で示される方法で説明されることがあります。

A (Assess mood and behavior)：気分と行動の評価
C (Choose alternative behaviors)：代わりの行動を選ぶ
T (Try out the alternative)：それを試す
I (Integrate the change into your life)：変化を生活に取り入れる
O (Observe the results)：結果を観察する
N (Now evaluate)：評価を行う

また、行動活性化では、回避行動のパターン（TRAP）から、対処行動のパターン（TRAC）への転換が重要であるとされています。

T (Trigger)：きっかけ
R (Response)：反応
A、P (Avoidance Pattern)：回避パターン
A、C (Alternative Coping)：代替行動

行動活性化の実践手順

行動活性化は、以下の手順で進められます。

1. 1週間の活動の振り返り：まず、日常生活における1週間の活動を1時間ごとに記録します。活動記録シートを用いて、それぞれの活動について「楽しさ」の度合いを0（全く楽しくない）から10（とても楽しい）の範囲で評価します。さらに、活動の日時、場所、簡単な内容を記録します。
2. 活動の理由の探求：記録された活動の中から、楽しい活動と否定的な活動について、クライアントと治療者が一緒に、それらの活動がなぜ楽しいのか、または否定的なのかを掘り下げていきます。また、クライアントが楽しめる活動のリストを作成するサポートも行います。
3. 週間計画の作成：楽しい活動を増やし、否定的な活動や何もせずに過ごす時間を減らすことを目指し、多くの楽しい活動と規則正しい生活リズムを取り入れた週間計画を、クライアントと治療者が共同で作成します。
4. 計画の実施：作成した週間計画を日常生活の中で実行できるように、クライアントをサポートします。
5. モニタリングと改善：計画の実施後、再度活動をモニタリングし、必要に応じて計画を修正し、さらなる改善に向けてサポートを継続します。

行動活性化のポイント

行動活性化では、単に活動量を増やすだけでなく、その活動がクライアントにとって本当に意味のあるもの、楽しめるものであることが重要です。また、計画を立てるだけでなく、それを実際に実行し、振り返り、改善していくプロセスが鍵となります。

まとめ

行動活性化は、うつ病などの精神的な問題を抱える人々が、より良い生活を送るための有効な手段です。自分自身の行動を見つめ直し、少しずつ変化を起こしていくことで、生活の質を向上させることができます。

参考文献

WHO mhGAPマニュアル

関連項目

認知行動療法
* 第三世代の認知行動療法

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