行動科学

行動科学

行動科学（英語: behavioural science）は、人間の行動を科学的な視点から研究し、その背後にある法則性を明らかにしようとする学問領域です。心理学、社会学、人類学、精神医学など、多様な分野が含まれます。社会科学と重なる部分も多いですが、社会科学が社会システムの構造レベルでの分析に重点を置くのに対し、行動科学は社会の中での個々の行動、コミュニケーション、意思決定のメカニズムなどを深く掘り下げて研究します。

行動科学に対する様々な見解

行動科学が包含する範囲については、研究者によって様々な見解があります。以下に、1970年当時の行動科学に関する科学者の見解を紹介します。

J.G.Millerの見解

ミラーは、行動科学を「個人として、あるいは社会における人間の理解に貢献する諸分野の結合された努力」と捉え、以下の分野を含んでいます。

人類学
生化学
生態学
経済学
遺伝学
地理学
歴史学
言語学
数学
神経医学
薬学
生理学
政治学
精神医学
心理学
社会学
統計学
動物学

B.Berelsonの見解

ベレルソンは、行動科学の領域をより絞り込み、人類学、心理学、社会学の3つを柱として捉えています。これに加えて、社会地理学、精神医学の一部、経済学と政治学、法学の行動を取り扱う側面を含めています。ただし、生理心理学、考古学、言語学の一部、形質人類学は除外しています。

ベレルソンは、ある領域が行動科学の一部として考えられるためには、以下の2つの基準を満たす必要があると述べています。

1. 人間行動を取り扱うものでなければならない（動物の行動を研究する心理学や動物学の一部は、間接的あるいは基礎的なところで人間行動を目指している場合に含む）。
2. 主題となる事柄を「科学的」に研究しなければならない。

ここでいう「科学的」とは、手続きが公開されていること、定義が精密であること、データの収集方法が客観的であること、事実が再現可能であること、接近法が組織的で集積的であること、などの条件を満たしていることを指します。

C.Wright Millsの見解

ライト・ミルズは、「社会的想像力」の中で、社会科学という用語よりも社会研究(Social Studies)を好むと述べ、行動科学という語の使用について疑問を呈しています。彼は、行動科学という言葉が、社会科学と社会主義を混同する人々から社会調査の資金を獲得するための宣伝戦略のように見られていると指摘しています。そして、用語をめぐる争いを避け、議論の余地のない「人間科学(human disciplines)」という用語を使用することを提案しています。

関連項目

行動
行動地理学
* 行動主義心理学

もう一度検索