衛綰

衛綰の生涯と功績

衛綰（えい わん、? - 紀元前130年）は、前漢の時代に名を馳せた政治家であり、代国大陵県の出身です。彼は若い頃からその才覚を見込まれ、漢の文帝、景帝、武帝に仕官し、最終的には丞相の地位にまで昇り詰めました。

初期の経歴

衛綰は、特に車を運転する技術に秀でており、それがきっかけで郎に任命され、文帝に仕えました。彼は勤勉さをもって昇進し、中郎将に昇格しました。彼の性格は非常に真面目で、卑しい考えを持たぬ謹厳な人柄でした。ある日、皇太子が宴会を開く際、彼は病気を理由に欠席したことがありましたが、文帝はその際、衛綰の忠誠心を高く評価し、景帝に対して彼を大切にするようにと遺言を残しました。

景帝との関係

景帝が即位後、彼は衛綰を側近として非常に重用しました。特に上林苑に行幸した際、衛綰を馬車に同乗させ、その理由を尋ねました。衛綰は自らの地位に対する謙虚さを示し、「自分はただの中郎将に過ぎない」と答えました。景帝は、彼がかつて皇太子の招待を断った理由を尋ね、衛綰は「病気でした」と素直に述べました。このように、衛綰は常に一貫した誠実さを貫きました。

衛綰は兵士たちの責任を一手に引き受け、他者の栄誉を横取りすることなく、功績があれば他の将軍に譲る姿勢を示していました。これに感銘を受けた景帝は、彼を忠実かつ信頼できる存在とし、河間王の太傅に任じました。

戦争と功績

呉楚七国の乱が発生した際、景帝は衛綰を将として任命し、彼は河間の兵を率いて戦闘に臨み大いに戦功を挙げました。その結果、紀元前154年には中尉に昇進し、紀元前151年には呉楚を討った功により、建陵侯として封じられました。彼が功績を挙げた翌年、景帝は皇太子劉栄を廃位させる政策を打ち出しましたが、衛綰は長者であるからにはその行為に耐えられず、休暇を取り、他の者にその任務を委任しました。

新たに皇太子が立てられると、衛綰はその太子の太傅に任じられ、紀元前147年には御史大夫として抜擢されます。続いて、紀元前143年には丞相となりましたが、その任期中、自身から新たな政策や法律を提案することは一度もありませんでした。景帝は、衛綰のような謹厳な人物こそ新しい君主にふさわしいと考え、彼にたくさんの賞賜を与えました。

最期の年

紀元前141年に景帝が亡くなると、翌年には武帝が即位しました。しかし、衛綰は景帝の病床で怨罪が多かったのにそれを救わなかった事を理由に、丞相の職を解かれてしまいます。最終的に、衛綰は紀元前130年に亡くなり、哀侯と称されました。彼の子・衛信は列侯の地位を継ぎましたが、後に酎金の事件によってその座を失ってしまいました。

衛綰の生涯は、献身と誠実をもって仕えた一政治家の物語であり、彼のような人物の姿勢は、歴史においても称賛される存在です。

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