表象

表象（ひょうしょう）

表象とは、一般に知覚したイメージが記憶され、心の中で再現される現象を指します。元々は「あるものが他の何かを指し示す」という意味を持ち、現在ではさまざまな文脈で用いられています。類義語には記号、イメージ、シンボル（象徴）があり、これらは表象という概念の異なる側面を表しています。

語義

翻訳語としての表象

「表象」という用語は翻訳語であり、その原語はギリシャ語の「phantasia」、ラテン語の「idea」「perceptio」、英語の「representation」、フランス語の「représentation」、ドイツ語の「Vorstellung」など多岐にわたります。最近の学術的な文脈では、「representation」やドイツ語の「Vorstellung」が広く認知されています。文献によっては用語の使い方が異なる場合もあり、一貫性には欠けることもあります。たとえば、「symbol」という用語は「象徴」と訳されることが一般的ですが、過去には「表象」と訳されることもありました。こうした混乱は哲学用語の翻訳においてしばしば見られます。

術語としての表象

哲学、心理学、認知科学、政治学、人類学、美術理論など、さまざまな分野で用いられる専門用語です。

哲学用語としての表象

クリスチャン・ヴォルフがラテン語の「perceptio」をドイツ語に訳した際に「Vorstellung」という用語が使われましたが、日本においては一般的に「表象」として認識されています。この哲学的な文脈での表象は、外界の対象を知覚することによって得られる内的な対象を指します。知覚表象と区別される「記憶表象」や「想像表象」についても考慮されることがあります。

ギリシア哲学と近代哲学における表象

ギリシア哲学では、表象は実相でもなく人間の思考とも異なる中間的な存在を持つとされていました。近代においては、デカルトが表象を通じて物事を把握する重要性を唱え、その地位を高めました。

ドイツ思想とフランス思想における考察

ドイツ語の「Vorstellung」は意識上の対象を表し、感情や思考を除いたものを示します。ハイデガーはこの概念を関連づけ、西洋形而上学の問題を提起しました。また、フランス思想では、表象が「再現前」や「代理体制」として理解されることもあります。ミシェル・フーコーは表象を西洋の17-18世紀の思考を理解するための重要な概念と考えています。

英米思想における表象

英米哲学では、ジョン・ロックやバークリらからのみならず、現在の分析哲学や認知科学においても重要な問題として「Representation」が論じられています。

認知科学における表象主義と反表象主義

認知科学の分野では、表象が外界を内的に描写する「表象主義」と、環境内に実在する知覚情報を基にした「反表象主義」という二つの立場が存在します。これにより、認識を形作る過程についての異なる視点が提唱されています。

その他

1986年には東京大学に「表象文化論」という学科が設立され、表象という用語は制度的に公認されるに至りました。

注釈と関連項目

関連する項目には観念、記号、心理学、認知、認識論、世界観、メンタルモデル、模写などが挙げられます。

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