被布

被布（ひふ）は、和服の上に羽織る一種の上着として知られています。

由来と歴史的な広がり

被布という言葉は、元々「披風」と記され、これは帯を締めずに着るため、風になびく様子から名付けられたとされています。その起源については明確ではありませんが、江戸時代の享和年間には既に存在していたことが分かっています。

当初、被布は主に茶人や俳人といった風流を好む男性に限って着用されていました。しかし、文政年間に入ると、その着用範囲は大きく広がり、婦人や尼僧にも着られるようになります。一般の女性の間では、最初は高位の武家の後室や隠居した身分の女性に限定されていましたが、やがて男性の羽織に対応するものとして、女性の間でも広く用いられるようになりました。

活動にはやや不向きな面がありましたが、保温性に優れていたため、特に高齢者や子供が着用すると、上品で可愛らしい印象を与えると評価されました。

特徴と構造

被布の生地には、光沢のある綸子（りんず）などがよく用いられます。その形状や用途は羽織に似ていますが、いくつかの distinctive な特徴があります。

羽織と比較すると、被布は胸の部分をしっかりと覆うほど打ち合わせが深く取られています。また、襟元はやや丸みを帯びた盤領（ばんりょう）、つまり円形の襟ぐりになっており、羽織のように紐を結ぶ代わりに、胸元で組みひもを用いて前を留める構造になっています。

元々は防寒や塵除けとして一部の男性が着用していたものですが、時代の変遷とともにその用途は多様化しました。そして現代、和服を仕立てる際に「被布」と言えば、一般的には少女が着用する「袖なし被布」を指すことが多くなっています。

現代の被布：少女の晴れ着として

現在、被布が最もよく見られるのは、七五三のお祝いに着物を着る幼い少女たちの上着としてです。

この少女用の被布、特に「袖なし被布」は、大人用の被布とは異なり袖がありません。色は白色や鮮やかな緋色の綸子がよく使われます。特徴的なのは、打ち合わせ部分の両肩あたりに、絹紐で作られた菊結びなどの飾り縫い付けられている点です。これは単なる装飾ではなく、汚れがつきやすい肩周りを保護する役割も兼ねていると考えられます。

袖なし被布を着用するのは、ほとんどの場合が10歳未満の少女です。少年やより年長の少女がこれを着る機会は少ないと言えます。貸衣装店などで3歳の女児向けの七五三用着物一式を借りる場合、通常はこの袖なし被布がセットに含まれています。

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