裁判官訴追委員会

裁判官訴追委員会の概説

裁判官訴追委員会は、日本において裁判官を弾劾するために、国会に設置される独立した国家機関です。この機関は、裁判官が職務上の義務に著しく違反した場合や、裁判官としての威信を著しく損なう行為をした場合に、裁判官弾劾裁判所に対して訴追する役割を担っています。具体的には、訴追委員は参議院議員と衆議院議員から各10名ずつの計20名で構成され、さらに予備員が各5名います。

訴追の対象と条件

日本国憲法第76条第3項により、裁判官はその良心に従って独立して職務を行うと規定されています。また、裁判官は公の弾劾によってのみ罷免されるため、訴追は慎重に行われなければなりません。裁判官弾劾法第2条では、訴追の対象となるのは以下の条件に該当する場合です：

1. 職務上の義務に著しく違反したとき
2. 職務やその他の行動において、裁判官としての威信を著しく失うような非行があったとき

さらに、訴追は原則として、その事由があった時から3年以内に行う必要があります。

歴史的背景

裁判官訴追委員会の設立は、日本国憲法制定に伴い行われました。大日本帝国憲法のもとでは、検察官が裁判官を訴追する制度がありましたが、新たに制定された裁判官弾劾法により、国会議員による訴追委員会が設けられました。戦後、この制度は大きな変革を遂げ、現在の形になりました。この制度では、裁判官に対する弾劾手続きが極めて厳格な要件を持つため、実際に訴追される裁判官は非常に少なくなっています。

訴追請求と手続き

訴追の請求は、誰でも裁判官の不正行為について訴追委員会に求めることができますが、その請求は自然人である日本国民に限定されています。また、訴追の手続きは、裁判官弾劾裁判所によって最終的に判断されます。最高裁判所も訴追委員会に対し、必要と認めた場合には訴追の求めができる仕組みになっています。

現在の運用状況

しかし、実際には訴追の件数は非常に少なく、1948年から2020年にかけて受理された訴追請求の中で、弾劾裁判が行われたのはわずか9件に過ぎません。特に、不当判決や誤審について訴追が行われた事例はなく、訴追委員会自体は司法の独立性を重視しているため、裁判官の判断を覆すことは原則として行われないと明言しています。

この様な背景を踏まえた上で、近年も訴追委員会やその運用についての評価が分かれており、制度自体が形骸化しているとの指摘も存在します。

組織と運営

裁判官訴追委員会は比較的小規模な組織で、委員長はその会議を統理し、必要に応じて委員の中から代理を立てることができます。委員は国会で選出され、委員会の事務局には国会職員が従事します。議事は非公開で行われ、訴追の要否を調査し、訴追が必要と認められた場合には罷免の訴追を行います。

以上が裁判官訴追委員会の概要です。日本の司法制度における重要な役割を果たすと同時に、その運用状況や制度への疑問も提起されている現状があります。

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