裂田の溝

裂田の溝（さくたのうなで）

概要

裂田の溝は、福岡県那珂川市にある農業用の灌漑用水路です。その歴史は非常に古く、日本最古の農業用水路の一つとされています。疏水百選にも選ばれており、その文化的、歴史的な価値は非常に高いです。

地理

裂田の溝は、那珂川市の中央部やや北、市街地から南に位置する山田地区の一の井手から取水しています。取水口から北へ進み、国道385号線と並走した後、東へと流れを変えます。その後、山田・安徳地域を北東に進み、水田と住宅地の間を縫うように流れます。この区間には、水路沿いに公園が2か所整備されており、地域住民の憩いの場となっています。また、安徳地区を抜けると、住宅地に入り、五郎丸地区で県道580号線をくぐります。

その後、北西に転じ、住宅地を流れ、安徳小学校の前を通過した後、那珂川市の中心市街地へと入ります。松木地区で西へ向きを変え、五郎丸地区で北へ、今光地区で再び西へと流れを変え、最終的に今光地区の青葉保育園付近で那珂川に合流します。

歴史

『日本書紀』には、神功皇后が三韓征伐の前に、武内宿祢に命じて現人神社の神田を灌漑するために造らせたと記述されています。しかし、周辺遺跡の発掘状況からは、実際には弥生時代に造られたとする説も有力です。

江戸時代には、貝原益軒が記した『筑前国続風土記』に、取水堰である「一の井手」について、「幅88間（約150m）で筑前国最大の堰である」と記述されています。この記述からも、当時から裂田の溝が重要な役割を果たしていたことが伺えます。

1949年（昭和24年）には、集中豪雨により那珂川が氾濫し、一の井手が決壊する被害を受けました。その後、1952年（昭和27年）に部分的な修復が行われ、1968年（昭和43年）には全面改修が実施されました。1988年（昭和63年）には、一の井手が現在の可動堰となり、旧井手の遺構も一部が残されています。

名前と伝説

裂田の溝の名前の由来には、次のような逸話が残されています。

溝を掘削していた際、現在の那珂川市安徳台にあたる迩驚岡（とどろきのおか）付近で巨大な岩に阻まれ、工事が一時中断しました。神功皇后が武内宿禰に命じて天神地祇を祀り、祈りを捧げたところ、雷が落ちて岩が裂けたため、工事を再開することができたとされています。この出来事から「裂田の溝」と呼ばれるようになったと言われています。現在、その場所には裂田神社が祀られており、落雷によって裂けたとされる岩も現存しています。

記念碑

一の井手付近には、裂田の溝に関する記念碑が建てられています。

外部リンク

疏水百選―裂田の溝 - 農林水産省
裂田の溝|ふくおか水土里の四季 - 福岡県農林水産部農山漁村振興課

関連項目

疏水百選
用水路

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