裸の王様 (小説)

裸の王様

『裸の王様』は1967年に開高健によって発表された短編小説で、1958年には芥川賞を受賞しました。この物語は、戦後の急速に変化する社会の中で、個々の存在の重みを問いかける内容となっています。具体的には、満たされない家庭や学校生活を経て、内向的になった少年・大田太郎の心を解放しようとする主人公の奮闘を描いています。

あらすじ

物語は、主人公が友人である小学校教師の山口から依頼を受け、太郎の絵画教育を担当することから始まります。太郎が描く絵は常に人間の姿が欠けているなど、創造性の限界を感じさせるものばかりです。そんな日々の中、太郎がある生徒の話から田舎での思い出を語る場面があり、そこから彼の内面に触れるきっかけが生まれます。

ある日、主人公は太郎を河原に連れて行き、彼が自然と戯れながら小魚を獲る姿を見て、内に秘めた強さを感じます。このできごとは、彼にとって太郎の成長を実感する瞬間となります。主人公はやがて、デンマークの児童美術協会に挿絵の交換プロジェクトを提案し、しばらくして太郎の父親である大田氏から連絡が入ります。大田は、彼の案を全国的な小学校向けに広めようと提案しますが、主人公は大人の介入が子供の自由な表現を妨げることを懸念しつつも、実務的な大田に委ねることに決めます。

その後、太郎が主人公の元を訪れ、新作の絵を見せる場面があります。その絵には、ちょんまげ姿で裸の男が描かれており、その姿は主人公が「裸の王様」に触れた際のイメージを反映したものでした。主人公は、この瞬間に太郎の創造力が開花したことを感じ、安堵します。しばらく経って、児童画コンクールの審査会場に招かれた主人公は、そこで展示されている子供たちの絵が絵本のような非現実的なものであるかを批判します。この中で、太郎の作品を名を伏せて審査員に見せると、辛辣な意見を述べられた彼らに対し、主人公はこの絵が太郎のものだと明かし、場に気まずい空気が流れます。主人公は、大人たちの思惑が子供たちの純粋な表現にどのように影響を及ぼすかを考え、自身の憤りを笑いに変えます。

主な登場人物

• - 僕: 子供向けの画塾の講師。太郎の成長を見守り、支えようとする。
• - 山口: 僕の友人で小学校の教師。
• - 大田: 太郎の父で画材会社の社長。仕事を第一に考える冷淡な家庭人。
• - 大田夫人: 太郎の養母であり、息子に過干渉な傾向がある。
• - 大田太郎: 内向的な性格の持ち主で、自分の世界に閉じこもっている。

収録書籍

『裸の王様』は1958年に文藝春秋新社から刊行され、多数の文庫や文学全集にも収録されています。この物語は、現代にも通じるテーマを抱えており、世代を超えて読み継がれる作品として位置付けられています。

テレビドラマ

この短編小説は、1958年にテレビドラマとしても制作され、視聴者に深い感動を与えました。実際の放送は、同年の4月に行われ、キャストには南原伸二、野上千鶴子などが名を連ねています。

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