西エルサレム

西エルサレムとは

西エルサレムは、1948年の第一次中東戦争によって定められた停戦ライン、通称グリーンラインより西側に位置する地域で、イスラエルの支配下に置かれたエルサレムの一部です。この戦争によって、エルサレムは東西に分断され、東エルサレムはヨルダンの支配下となりました。1967年の第三次中東戦争以降、東西エルサレムは共にイスラエルの実効支配下にありますが、西エルサレムに対するイスラエルの主権は、国際的にも比較的広く受け入れられています。ただし、イギリスをはじめとする西側諸国は、イスラエルの事実上の権威は認めているものの、法的な承認は保留している状況です。

歴史的背景

第一次中東戦争以前

1948年の第一次中東戦争以前、西エルサレムには約2万8千人のアラブ人コミュニティが存在し、エルサレムの中でも特に裕福な地域の一つでした。しかし、戦争の結果、この地域に残った非ユダヤ人はわずか約750人となり、そのほとんどがギリシャ人でした。

戦争による分断

戦争後、西エルサレムは約3万人のアラブ人が逃亡・追放され、イスラエルの統治下に入りました。一方、東エルサレムはヨルダンの統治下となり、主にパレスチナ人のイスラム教徒とキリスト教徒が住む地域となりました。この過程で、東エルサレムの旧市街に住んでいた約1,500人のユダヤ人コミュニティも追放されました。

略奪行為

戦争中には、アラブ人が住んでいた地域で大規模な略奪行為が発生しました。エツィオーニ旅団のモリア大隊司令官モシェ・サロモンは、カタモン地区での略奪について、兵士たちが物欲に取り憑かれていた状況を証言しています。家々は徹底的に捜索され、農産物や貴重品が持ち去られました。この略奪の結果、イスラエルの機関が集めたのは、主にアラビア語で書かれたイスラム法やクルアーンの解釈、ヨーロッパ文学の翻訳などの書籍約3万冊と、教会や学校が所蔵する数千冊の作品でした。また、カタモン、バカー、ムスララのパレスチナ人作家や学者の自宅からも多くの本が持ち出されました。

1949年の分割

国連のパレスチナ分割計画では、エルサレムとその周辺を国際都市として「コーパス・セパラタム」（分離体）とすることが計画されていました。しかし、実際には、西エルサレムのカタモンやマルハなどに住んでいたアラブ人、東エルサレムの旧市街やシロアムなどに住んでいたユダヤ人は立ち退きを余儀なくされました。委任統治以前の西エルサレムでは、土地の約33%がパレスチナ人のものであり、この事実は、追い出されたパレスチナ人が西エルサレムにおけるイスラエルの支配を受け入れることを困難にする要因となりました。クネセト（イスラエル議会）は、このアラブ人の土地をイスラエルのユダヤ人組織に譲渡する法律を成立させました。

イスラエルの首都としての西エルサレム

1950年、イスラエルは西エルサレムを首都と定めました。政府は雇用創出のために多額の投資を行い、新しい政府施設、大学、大シナゴーグ、クネセト議事堂などを西エルサレムに建設しました。また、アメリカ合衆国は2017年に、オーストラリアは2018年に西エルサレムをイスラエルの首都として正式に承認しました。

再統一と現状

第三次中東戦争と併合

1967年の第三次中東戦争で、イスラエルは東エルサレムとヨルダン川西岸全域を占領しました。しかし、国際社会はこれらの占領地におけるイスラエルの統治を認めず、その支配は不安定なままでした。1980年には、イスラエル議会が「統一エルサレムはイスラエルの不可分かつ永遠の首都である」と宣言するエルサレム基本法を制定しましたが、東エルサレムを恒久的に併合する意図があるとして国際社会から反発を受け、国際連合安全保障理事会決議478が可決されました。

現在のエルサレム

現在のエルサレムは、歴史的な東西の区分に沿って人口分布がほぼ分離したままです。経済的にも政治的にも、ほぼ完全に分離した二つの中心が存在し、それぞれが独立した中央ビジネス地区を形成しています。この構造は、従来の単心的な構造ではなく、二心的な構造であるという分析が支持されています。

まとめ

西エルサレムは、その歴史的背景から、多くの複雑な問題を抱える地域です。イスラエルにとっては首都としての重要な位置を占める一方で、国際社会からの承認は完全ではなく、その地位は依然としてデリケートな問題を抱えています。

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