西宮市歌

「西宮市歌」（にしのみやしか）は、兵庫県西宮市が1946年（昭和21年）に制定した公式な市歌です。この歌の歌詞は一般からの公募で選ばれた北村正元氏の作品が採用され、作曲は日本を代表する音楽家である山田耕筰氏が手掛けました。制定は1946年 12月23日付で行われています。

制定までの道のり

西宮市は1925年（大正14年）に市制を施行しましたが、すぐに市歌が作られたわけではありませんでした。市制10周年にあたる1935年（昭和10年）には、記念として市民音頭「西宮音頭」が選定されましたが、これは市歌とは性格の異なるものでした。その後、日本は戦時体制へと移行し、本格的な市歌の制定は太平洋戦争の終結を待つことになります。終戦を迎えた翌年の1946年、西宮市は新たな時代の始まりとともに市民歌の制定を目指し、広く市民から歌詞のアイデアを募集しました。多数の応募の中から、北村正元氏の提出した作品が一等入選を果たし、市歌の歌詞として採用されることになりました。作曲は、関西学院との縁もあったとされる著名な作曲家、山田耕筰氏に依頼され、市歌は完成に至りました。制定後、特に1951年（昭和26年）に周辺の村々を編入して市域が拡大した後も、市の市勢要覧に歌詞と楽譜が掲載され、市民への周知に努められました。

歌詞にみる時代の特徴と位置づけの変化

西宮市歌は全3番で構成されています。歌詞の中では、1番で古くから大阪湾を指す「茅渟の浦」、2番で酒造りで名高い「灘五郷」、そして3番で「えびすの宮」として知られる西宮神社と、制定当時の市域に含まれる象徴的な場所や名物がバランスよく織り込まれています。しかし、制定から数年後の市域拡大に伴う新しい地域については歌詞に反映されていません。

また、この市歌が作られたのは戦後間もない時期であり、当時の社会情勢を色濃く反映した語句が用いられています。「民生」「自治」「文化」「建設」「平和」といった言葉に代表されるように、戦後の復興や新しい社会の建設に向けた意欲が強く感じられる内容です。一方で、1952年（昭和27年）のサンフランシスコ講和条約発効による日本の独立回復など、社会情勢が変化していく中で、歌詞の持つ復興色が時代の流れにそぐわないと判断されるようになります。

このような背景から、西宮市は1955年（昭和30年）に、市民が日常的に親しみやすい新たな歌として「西宮市民歌」を別に制定することを決定しました。これにより、従来の西宮市歌は「主として式典等に利用する」という形で、その役割が限定されることになったのです。その後も、西宮市では様々な市民愛唱歌が作られていますが、西宮市が古くから合唱活動が盛んな地域であることもあり、西宮市歌もこれらの後発の歌と並んで、現在も市民に歌い継がれています。

著作権と関連楽曲

西宮市歌の作曲者である山田耕筰氏の旋律に関する著作権保護期間は、2015年（平成27年）12月31日をもって満了しました。しかし、作詞者の北村正元氏については残念ながら消息が不明な状況が続いており、歌詞に関する著作権の扱いは定かではありません。2012年（平成24年）に刊行された全国の自治体歌に関する書籍では、北村氏に関する情報提供が広く呼びかけられています。

西宮市に関連する主な楽曲としては、以下のものが挙げられます。

西宮市民歌: 1955年制定。日常的な愛唱を目的とした歌で、作詞は難波立夏女氏（補作：喜志邦三氏）、作曲は徳永秀則氏。
文教住宅都市西宮の歌: 1963年制定。「文教住宅都市宣言」の理念普及のため、作詞を喜志邦三氏、作曲を鎌田廉平氏が担当。市の公式サイトで市歌と共に紹介。
* 愛してますかふるさとを（西宮市平和の歌）: 1985年制定。「平和非核都市宣言」を受けて作られた平和の歌。作詞は藤原彩子氏（補作：高田直和氏）、作曲・編曲は小坂務氏。市の平和関連ページで紹介。

これらの楽曲は、それぞれの時代や市の重点施策を反映しており、西宮市の歩みと共に歌い継がれています。

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