西田正憲

西田 正憲

1951年生まれの日本の造園学者、および元造園系官僚。専門は景観論、環境文化論、自然観光論など多岐にわたる。長年にわたり造園分野の研究・教育に携わり、現在は奈良県立大学名誉教授を務める。

来歴

京都府に生まれ、京都大学農学部林学科で造園学を専攻。同大学大学院修士課程を修了後、1975年に環境庁（現在の環境省）に入省する。官僚としては、日本各地の国立公園の管理業務に深く関わった。1981年には、アメリカ合衆国内務省国立公園局とミシガン大学が共催する自然保護区に関する国際セミナーに参加するなど、国際的な視点も養う。

キャリア途上の1988年、阿蘇くじゅう国立公園での勤務中に病に倒れる。この病により、1年間の人工呼吸器装着を含む長期にわたる療養生活を余儀なくされた。その後1年間の入院を経て、1990年に岡山県で職場に復帰する。復帰当初は歩行に杖が必要な状態であり、医師からは車椅子での生活も示唆されるほどであったが、幸いにも身体は回復に向かい、自らの足で再び歩けるようになった。この困難な時期を経て、西田氏は研究活動に一層力を入れるようになる。岡山での勤務地に近い瀬戸内海に関心を寄せ、その風景や歴史に関する文献を精力的に収集・研究し、報告書としてまとめた。

この研究活動は関係者の評価を得て、環境庁OBの大井道夫氏や歴史学者の白幡洋三郎氏らから学術的な深耕と博士号取得を勧められる。これを機に、西田氏は学術論文の執筆を開始し、学会での発表を重ねていく。1995年から2000年にかけては、博士論文の執筆に集中するため、母校に近く研究環境が整った京都御苑管理事務所に庭園科長として勤務した。そして、転任翌年の1996年には、「瀬戸内海の風景論」に関する研究成果が認められ、京都大学から農学博士号を取得した。

2000年からは奈良県立大学に活躍の場を移し、地域創造学部の教授に就任する。これは、身体的な状況から大学での教育・研究を希望していた西田氏が、同大学の教員であった先輩に誘われたことによって実現したものであった。奈良県立大学では、付属図書館長、学生部長、学部長といった要職も歴任し、大学運営や学生指導にも貢献した。2016年に同大学を退職し、名誉教授の称号を授与された。

研究・業績

長年の官僚経験と病気からの回復という稀有な経験を経て、風景や環境、自然観光に関する独自の視点を確立。技術士環境部門の資格も保持しており、学術研究のみならず実務的な知識も豊富である。特に瀬戸内海の風景研究は、博士論文をはじめとする多くの著作に結実しており、地域の文化や歴史と風景の関係性を深く掘り下げた研究は高く評価されている。

受賞歴

1998年：国立公園協会田村賞
1999年：日本造園学会賞（研究論文部門）
2013年：日本造園学会特別賞（著作出版業績）

著書

（主な共著、分担執筆を含む）

『ランドスケープ空間の諸相』（共著）角川書店、2000年
『ランドスケープのしごと』（分担執筆）彰国社、2003年
『自然の風景論』清水弘文堂書房、2011年
* 『瀬戸内海の発見－意味の風景から視覚の風景へ－』中央公論新社

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