西野努

奈良県生駒市に生まれ育った西野 努氏は、1971年3月13日生まれの元プロサッカー選手です。現役時代は主にディフェンダーとして、ピッチでチームの守備を担いました。

その経歴は、一般的なプロサッカー選手とは一線を画しています。高校卒業後、奈良県立奈良高等学校から神戸大学経営学部へと進学。この選択の背景には、当初、会計士を目指すという明確な目標がありました。大学生活の中で、受験勉強の反動で始めた遊びに物足りなさを感じ始め、高校の先輩からの誘いを受けてサッカー部に入部します。全国大会や代表チームでのプレー経験などはなく、大学入学時点では全く無名の存在でした。当時の神戸大学サッカー部は指導者がおらず、練習は学生たちの自主運営で行われていたといいます。関西学生リーグで1部と2部を行き来するレベルでしたが、西野氏の同学年には高校時代に国体で活躍した選手も複数おり、チームは関西学生リーグ1部へと昇格。自身も関西学生選抜に選ばれるまでになります。

大学4年生の春には、Jリーグのガンバ大阪から練習参加の誘いを受け、夏には浦和レッドダイヤモンズからも声がかかります。父の会計事務所を継ぐため、既に会計士の勉強を始めていた西野氏でしたが、「まず2年間プロとして挑戦し、もし芽が出なければ会計士に戻ればいい」と決断。周囲の理解を得て、プロサッカー選手の道を選びます。

神戸大学卒業後の1993年、浦和レッドダイヤモンズへ入団。プロ1年目からリーグ戦出場を果たし、浦和のディフェンスラインに欠かせない選手として活躍を続けます。1998年には日本代表候補にも選出されるなど、その存在感を示しました。プロとして約9年間プレーした後、2001年に現役を引退します。

引退後のキャリアもまた、多岐にわたります。サッカー界を離れ、イギリスのリヴァプール大学に留学し、経営学修士（MBA）を取得。これは、将来的にサッカークラブの運営に関わることを視野に入れたものと言われています。帰国後は、浦和のフロントスタッフとしてスカウト業務などに携わった経験を持つほか、複数の企業の取締役を務めるなど、ビジネスの世界でも活躍しました。その傍ら、浦和レッズ関連の各種イベントや講演、執筆活動などを通じて、自身の経験を伝える活動も続けています。

教育分野では、2008年から産業能率大学の客員教授に就任し、2016年からは情報マネジメント学部の教授として教鞭をとりました（2021年3月まで）。また、2015年4月には神奈川県茅ヶ崎市に中学生を対象としたサッカークラブ「AFC茅ヶ崎」を設立し、若手育成にも尽力しています。

2019年11月からは、古巣である浦和レッズのテクニカルダイレクター（TD）に就任。ポーランドのサッカーメディアAzjaGolaのインタビューで、TDの業務を「スカッドの計画」と「チームマネジメント」に大別して説明しています。「スカッドの計画」とは、選手の雇用やスカウト、契約の締結・更新などを統括する役割を指し、スカウト部門や法務担当を含むスタッフをまとめていました。一方、「チームマネジメント」には、日々のトレーニング計画の策定や準備、遠征の管理、選手やクラブ従業員への給与支払い、業績評価などが含まれます。さらに、取締役会やクラブ社長との連携役も担うなど、多岐にわたるクラブの強化・運営業務に関わりました。

浦和レッズTDを退任後、2024年8月からはシティ・フットボール・グループでの活動を経て、2025年シーズンからは横浜F・マリノスのスポーティングダイレクター（SD）に就任することが発表されています。選手、経営者、教育者、そしてクラブの組織運営者として、その知識と経験を活かし、日本のサッカー界の発展に貢献し続けている人物です。

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