見送って

短編小説『見送って』の概要

『見送って』は、松本清張による短編小説で、1978年5月号の『小説新潮』に掲載され、その後1979年12月に短編集『隠花の飾り』として新潮社から刊行されました。1978年の短編発表から約八年後の1986年には、テレビドラマとしても放映されています。

あらすじ

物語は、女子大学を卒業した島村悠紀子の結婚式から始まります。悠紀子の母である基子は、夫を早くに失い、厳格な姑に仕える日々を送りながらも、娘を立派に育て上げてきたことが親族の前で称賛されます。そんな基子は短歌を詠むことに喜びを見出しており、その中には悠紀子が理解できない謎めいた歌も含まれています。それは、母が信州を訪れている際に詠まれたはずなのに、舞台が京都なのです。

結婚式の後、新郎新婦は新婚旅行に出発します。その時、基子は親族が見送る中で思わず立ち止まり、姑たちの前で一言を発するのですが、それは驚くべき宣言でした。彼女は、亡き夫との約束を果たしたため、これからは自由に生きるつもりだと語り始めます。このセリフは彼女にとって新しい人生のスタートを意味しており、そこには彼女の隠された感情や過去の重みが秘められています。

エピソード

著者松本清張は、この作品に関するメモを残しており、その内容は非常に興味深いものです。彼は登場人物として、四十五歳の未亡人が登場すること、息子が結婚する場面が描かれること、そして、母親がモーテルの経営を宣言するシーンを記しています。この行動は彼女の決意を象徴しており、姑との複雑な関係もまた本作の重要なテーマの一部です。未亡人としての彼女がモーテルを経営すると聞いた人々は、その選択に驚きを隠せず、様々な反応を見せます。

テレビドラマ化

1986年5月19日に、関西テレビによって制作された『松本清張サスペンス 隠花の飾り』というテレビドラマの一部として放映されました。このドラマは、フジテレビ系列で放送され、視聴率は13.9％を記録しました。キャストには、多くの実力派俳優が揃っており、脚本は大薮郁子が手掛け、監督には鷹森立一が起用されました。また、音楽は三枝成彰が担当しています。

『見送って』は、親子の感情や未亡人の生き様を描くことで、読者や視聴者に深く考えさせる作品です。母と娘の間に横たわる過去の秘密や、人生の選択がテーマとなっており、松本清張ならではの深い描写が散りばめられています。

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