記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財

記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財とは？

「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」とは、重要無形民俗文化財や登録無形民俗文化財に指定されていない無形の民俗文化財の中でも、特に保存・継承の必要があると認められたものです。文化庁長官が文化審議会の答申に基づいて選定し、記録作成、保存、公開のための経費の一部を国が補助します。通称「選択無形民俗文化財」と呼ばれていますが、これは法律上の正式名称ではありません。

この制度は、文化財保護法に基づいています。同法では、国が重要性の高い無形の民俗文化財を選定し、その記録作成、保存、公開を支援することを規定しています。これにより、貴重な民俗文化の継承と発展に貢献することを目的としています。

選定基準

選定にあたっては、以下の基準が設けられています。

1. 風俗慣習:我が国の生活文化の特色を示す重要なもの。具体的には、由来や内容が国民生活の基盤を成す典型的なもの、年中行事や祭礼などにおける芸能の基盤を示すものなどが該当します。
2. 民俗芸能:芸能の発生・成立、変遷の過程、地域的特色を示す重要なもの。歴史的背景や地域独自の文化を反映した芸能が対象となります。
3. 民俗技術:技術の発生・成立、変遷の過程、地域的特色を示す重要なもの。伝統的な技術や技法、その歴史的変遷、地域性などが評価の対象となります。
4. その他:上記3点には該当しませんが、重要有形民俗文化財の理解に不可欠な無形の民俗文化財。関連する有形文化財を理解する上で重要な情報となる無形文化財が含まれます。
5. 外国に関連するもの:我が国民以外の民族に伝わる無形の民俗文化財であっても、我が国の生活文化と関連が深い重要なものは対象となります。グローバル化の時代において、国際的な視点を取り入れている点が特徴です。

これらの基準は、日本の文化の多様性と独自性を保全し、後世に伝えるという重要な役割を担っています。

選定状況と歴史

文化庁長官は、上記の基準に基づいて「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」を選定し、地方公共団体が実施する調査や記録作成事業に対して助成を行っています。2005年の文化財保護法改正により、「民俗技術」が新たに無形の民俗文化財の対象に加えられました。その結果、2008年には「中津川の鉄砲堰製作技術」が民俗技術として初めて選定されました。

2023年3月22日現在、654件の無形の民俗文化財が選定されています。内訳は、風俗慣習（生産・生業、人生・儀礼、娯楽・競技、社会生活、年中行事、祭礼、衣食住など）、民俗芸能（神楽、田楽、風流、語り物、延年など）、民俗技術（生産・生業、衣食住など）に分類されています。これらの数字は、日本の民俗文化の豊かさと多様性を示すものです。

地方自治体の取り組み

国による選定に加え、群馬県や埼玉県など、いくつかの地方自治体も独自の条例に基づいて「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」を選定し、地域文化の保護に努めています。こうした取り組みは、国と地方の連携による民俗文化財保護の体制を示しています。

まとめ

「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」の制度は、日本の貴重な民俗文化を記録、保存、公開することを通じて、将来世代に継承していくための重要な取り組みです。国と地方自治体の連携により、日本の伝統文化が守られ、発展していくことが期待されます。

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