許諾を得ないレコードの複製からのレコード製作者の保護に関する条約

レコード製作者の保護に関する条約：海賊版対策の国際的な取り組み

1971年、スイスのジュネーブにおいて、レコード製作者の権利保護に関する重要な国際条約が締結されました。正式名称は「許諾を得ないレコードの複製からのレコード製作者の保護に関する条約」で、通称「レコード保護条約」または「ジュネーブ・レコード条約」と呼ばれています。UNESCOとWIPOが共同で管理するこの条約は、海賊版対策を強化することを主な目的としています。

条約の目的と内容

この条約の核心は、レコード製作者の権利、いわゆる「原盤権」の保護にあります。ここでいう「レコード」は、従来のアナログレコードだけでなく、カセットテープ、CD、デジタルファイルなど、音声を記録した媒体全般を包含する広義の概念です。

条約は、レコード製作者を、無断複製、輸入、頒布といった行為から保護することを明確に謳っています。具体的には、以下の点が規定されています。

無断複製物の取り締まり: 海賊版の製造、輸入、販売などを法的に規制し、レコード製作者の利益を守るための枠組みを設けています。
保護期間の規定: レコード製作者の権利の保護期間を、最低でも20年以上と定めています。これは、製作者が作品から適切な経済的利益を得られる期間を確保することを目的としています。
* 権利表示の義務: 特定の国々では、レコード製作者は作品に「℗」（丸P記号）を表示することが義務付けられています。この記号は、レコード製作者の権利を明確に示す役割を果たします。ユニコードでは「℗」と表記されます。

ローマ条約との関係性

既に1961年には、「実演家、レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約」（ローマ条約）が締結され、レコード製作者を含む著作隣接権の保護が包括的に規定されていました。しかし、レコード保護条約は、ローマ条約を補完する形で、特に海賊版の蔓延という喫緊の課題に対処することを目的としています。より具体的な保護措置を盛り込むことで、実効性の高い権利保護を目指しています。

日本の批准と効力発生

日本は1978年にこの条約を受諾し、同年10月14日より条約が日本において効力を発生しました。これは、日本の音楽産業の保護と国際的な著作権保護体制への貢献において重要なステップでした。

条約の意義

レコード保護条約は、国際的な枠組みの中で、レコード製作者の権利を効果的に保護することを目指した条約です。海賊版の横行は、製作者の経済的損失だけでなく、文化的な創造活動にも悪影響を及ぼします。この条約は、クリエイターの権利を尊重し、文化産業の健全な発展に貢献する重要な役割を担っています。 条約の締約国数は、2010年時点で77ヶ国に上り、世界規模での権利保護体制の構築に寄与しています。 今後、デジタル技術の進歩に伴い、著作権侵害の形態も多様化していくことが予想されますが、本条約の理念は、デジタル時代の著作権保護においても重要な指針となるでしょう。

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