詠隊

詠隊について

詠隊（えいたい）は、正教会の奉神礼において定められた役割として、歌唱担当者を指します。他のキリスト教の教派に存在する聖歌隊と類似の意味合いを持つこともありますが、文脈によっては意味に微妙な違いが生じることがあります。

詠隊と聖歌隊の違い

正教会の祈祷書では、文言を詠む者として詠隊が明記されています。詠隊は奉神礼中に歌唱することが求められる者たちであり、特別な訓練を受けた聖歌隊員である必要はありません。小規模の教会では、誦経奉仕者が詠隊の役割を兼任することがよく見られます。これに対して、聖歌隊は中規模以上の教会に設けられ、特化した訓練を受けていることが特徴です。

このため、「聖歌隊員は詠隊の役割を果たすことができる」と言える一方で、「詠隊のメンバーは必ずしも聖歌隊員とは限らない」となります。また、詠隊には神品（聖職者）が含まれることもあります。

誦経と聖歌の違い

誦経（しょうけい）と聖歌の区別は正教会では曖昧で、基本的にはすべての祈祷が歌われるとされています。誦経を担当する誦経奉仕者と聖歌を担当する詠隊の役割は、旋律の変化の度合いによって相対的に決まります。そのため、誦経と聖歌の明確な区分は難しいのが現状です。

特にスラヴ系正教会では、誦経部分は抑揚を抑えた音階で朗誦されることが一般的であり、旋律を持つ聖歌部分と容易に区別できます。しかし、どの部分を歌うのかは神品の判断に委ねられているため、教会によって差異が見られます。

詠隊の役割と位置づけ

現代では、詠隊として指定された部分を全員で歌うことが一般化しています。特に信経や天主経といった旋律が比較的容易な部分は、会衆全体で唱えることがよくあります。日本のニコライ堂のような大規模教会では、訓練を受けた聖歌隊によって多くの祈祷が行われますが、信経や天主経は会衆全員で歌うことが慣習化されています。逆に小規模な教会では、ほぼ全ての会衆が詠隊として活動するため、詠隊と会衆の境界はあいまいになります。

詠隊の役割は特に選ばれた信徒に限定される傾向が残っており、かつては教会の一員としての役目が強調されていました。ただし、最近では宣教に配慮して、司祭の許可を得た非信徒が一時的に詠隊に参加することも可能となっています。

しかし、大規模な聖歌隊においては、そうした例は稀です。詠隊は正教の奉神礼において非常に重要な位置を占めており、その役割は一般的に信徒に開放されるものではないとされています。詠隊と誦経奉仕者の間には相対的な関係があり、どちらも神の民として重要な役割を果たす存在です。

このように、正教会における詠隊は、聖歌隊や誦経奉仕者との関係性の中で独自の役割と意義を持っています。

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