試製七糎半対戦車自走砲 ナト

試製七糎半対戦車自走砲 ナト

試製七糎半対戦車自走砲ナトは、大日本帝国陸軍が太平洋戦争の期間中に設計した自走戦闘車両です。この砲は、当時の日本軍が使用していた対戦車砲の威力が不足しているという問題を解決するために開発されました。従来の装備では、アメリカ軍のM3やM4中戦車の装甲を貫通できなかったため、より強力な火力を持つ自走砲が必要とされました。

開発の背景

日本軍が使用していた九四式三十七粍砲や九七式中戦車などは、戦車への攻撃力に限界がありました。特に初期の太平洋戦争では、アメリカ製の中戦車に対して劣勢を強いられており、装甲を貫通する力が不足していました。1943年には、M4中戦車との正面戦闘で大きな損害を被り、戦術の見直しが求められました。太平洋戦線の状況を考慮し、口径75mm級の対戦車砲を搭載する自走砲の構想が持ち上がり、この車両の開発が始まりました。

開発プロセス

昭和17年2月、日本陸軍技術研究本部の計画によって75mm級の対戦車砲の研究が開始されました。翌年の1944年には、設計が完了し、試作砲が製作されました。砲は四式七糎半高射砲を基にしており、初速850m/sの砲弾により射程1,000mで約80mmの装甲を貫通できると評価されました。1945年には試験射撃が行われ、改良が施された後、正式に制式化されるに至りました。

性能と特徴

試製七糎半対戦車自走砲ナトは、7輪の装軌式車両で、エンジンには165馬力のディーゼルエンジンが搭載されています。最高速度は時速40kmに達し、砲身は車体に対して後部に設置されていました。火力は、弾薬として一式徹甲弾や四式榴弾を使用し、最大約68発の弾薬を装備可能です。

貫通能力

砲の貫通力は時代背景を考慮して開発され、特にM4中戦車などの敵車両に対抗できるよう設計されています。装甲貫通力に関するデータは様々ですが、射程1,000mで最高140mmの鋳鋼板を貫通する能力が確認されています。この性能向上により、戦場での有効性が期待されていました。

戦場での運用

しかし、この試製自走砲は戦局の変化により大規模な運用に至ることはできず、昭和20年の終戦間際においてようやく少数が生産された状態でした。量産はあまり進まず、導入された数に限りがあったため、実戦での評価は難しい状況でした。

終わりに

試製七糎半対戦車自走砲ナトは、日本の装甲車両開発の中でも特異な事例を示すものであり、当時の軍事技術の進展を反映しています。設計自体は戦局の悪化の影響を受け、期待される成果を上げることはできませんでしたが、戦車に対抗するための技術的努力の象徴となりました。

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