試製十糎対戦車自走砲

試製十糎対戦車自走砲 カト

試製十糎対戦車自走砲カトは、大日本帝国陸軍によって研究された新しい対戦車自走砲です。この車両はオープントップ式で設計されましたが、実際に完成したものは存在しません。なぜなら、設計が進行中の1945年に終戦を迎えたからです。

概要

この車両は、アメリカ軍のM4中戦車やM26重戦車と交戦することを想定して開発されました。特に、敵戦車を撃破するためには、口径105mmの対戦車砲が必要とされました。陸軍は砲の自走式を選択し、重量のある砲を人力で運用することが不可能との判断から自走砲という形に進めたのです。設計作業は1944年1月に開始され、1945年2月には実用試験が予定されていました。

設計会議では、105mm徹甲弾を使用し、距離1000mで200mmの装甲を貫通できることを目標としていました。しかし、既存の砲身材料を使用した場合、この目標の達成は困難であるとされ、新たに砲を開発する計画が立てられましたが、実際には実行されることはありませんでした。

構造

この自走砲は、三菱重工業によって試作されましたが、終戦時にはまだ完成には至らず、1輌が製作途中でした。車体の設計は新規で行われ、四式中戦車の足回りなどから流用される部分が多かったと考えられています。基本的な形状は、オープントップの対戦車自走砲で、限られた装甲しか持っていませんでした。

車体の前部にはエンジンルームがあり、その後方には操縦室、さらに戦闘室が設けられていました。車体中央には防盾付きの105mm対戦車砲が装備され、戦闘室の側面は外側に倒すことで作業スペースを確保できるようになっています。この車両は、弾薬を45発搭載することができる設計でした。

砲の射撃範囲は左右に45度、俯仰角は-10度から+20度までを想定されていました。エンジンはディーゼル式で400馬力を発揮し、最大速度は40km/hを目指していました。装甲は、前面25mm、側面20mm、上方12mmの限られた厚さで、全体の重量は約30トンと算定されていました。

また、使用される砲は新たに開発された試製十糎対戦車砲で、1944年6月には設計が完了し、1945年5月には2門が完成しました。試製砲の特長としては、口径105mm、ライフリング長は4720mmを持ち、初速は約900m/sで150mmの鋼板を距離1000mで貫通できる性能がありました。

まとめ

試製十糎対戦車自走砲カトは、非常に意義深い試みであったものの、完成に至らず歴史の中に埋もれてしまいました。この車両の開発は、当時の戦車戦における技術の進展や、戦局の変化を反映していると言えるでしょう。将来的な方向性や建設的な試行錯誤の中で、残されたデータや設計図は、後の軍事技術に多大な影響を与えたかもしれません。

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