誉津別命

誉津別命とは

誉津別命（ほむつわけのみこと、生没年不詳）は、古墳時代に活躍した皇族であり、歴史的な記録である『記紀』や『尾張国風土記』などに登場します。彼は垂仁天皇の第一皇子で、母は皇后の狭穂毘売命です。彼についての記録は多岐にわたり、『日本書紀』では誉津別命と呼ばれ、『古事記』では本牟智和気命や品牟津和気命と表記されています。彼に関する伝承は、彼の生涯や性格だけでなく、神々との関わりや家庭の歴史をも描いており、数多くの神話的な要素が含まれています。

誕生の伝説

誉津別命の誕生は非常に特異で、彼は稲城という場所で火の中から生まれたとされています。『古事記』によれば、彼の母である狭穂毘売命は、兄の狭穂彦の叛乱の際に自殺を図ったとされ、彼の誕生は全くの偶然によってもたらされたといいます。『日本書紀』では、彼が叛乱の前に生まれたことが示されていますが、火の中から彼が救出されたという点では両方の記録は一致しています。伝えるところによれば、彼の誕生日は垂仁天皇5年11月と位置付けられています。

言葉を発しない皇子

誉津別命は父天皇から非常に好かれていましたが、成長しても言葉を発することがありませんでした。髭が胸に達するまで、彼は赤ん坊のように泣き続けたと伝えられています。ある日、彼が鵠（今の白鳥）が飛ぶのを見て「是何物ぞ」とついに言葉を発しました。これに喜んだ天皇はその鵠を捕まえるよう命じ、誉津別命はその存在によって言葉を発せるようになったとされています。この出来事は新たな部族（鳥取部・鳥飼部・誉津部）の設立につながりました。

言語獲得の過程

『古事記』には、彼が父天皇とともに遊ぶ中で、鵠を見て何かを言おうとしていたことが詳しく記されています。天皇は夢の中での神からの啓示を受け取り、出雲に赴いて出雲大神に拝み、信仰を持つことによって彼の言葉を返すようにする必要があると知ったとされています。誉津別命が言葉を発するようになった際、返りの際には様々な地域に部落が設けられ、さらに神とはどうあるべきかが問われています。

肥長比売との関係

誉津別命の物語には、出雲での肥長比売との婚姻も含まれますが、彼との出会いは非常に特異で、彼女が蛇の身体を持っていたため、恐れを抱いて逃げることになりました。肥長比売は海を越えて追いかけてくるものの、彼はさらなる畏怖から大和へと逃げ帰りました。このエピソードは、彼が持つ神秘的な運命と火中での出生を象徴すると考えられています。

解釈の差異と神話的背景

誉津別命の物語は神話研究において多くの解釈が行われています。彼の物語は、神話としての意味や日本の精神文化における神々との関わりの深さを示すものとして位置づけられています。彼の生涯における多様なエピソードは、他の神話と結びついて独自の神話的意味を持つとされ、後世における日本の人々の信仰や文化に影響を与えたと考えられています。

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