語り手

語り手（かたりて）についての概念

語り手とは、物語の中でその内容を語る存在を指し、物語の視点を形成する重要な要素です。一般に、ナレーターや語り部とも呼ばれ、小説、映画、演劇など、幅広いストーリーテリングの形式で利用されます。語り手は、作品を評価する上で、作者や読者と並ぶ重きを持つ存在であり、その役割の理解は物語の全体像を把握するための鍵となります。

語り手の役割と存在

物語は、現実世界とは異なるフィクションの世界を描くために、作家によって創り出されます。この中で語り手は、読者が物語を理解しやすいように状況を説明し、物語の流れを導く役割を担います。語り手は作者とは異なる存在であり、彼らは物語の内部にのみ存在し、物語の外部である現実世界には存在しません。特にノンフィクションの場合、語り手と作者が同一であることが多くなりますが、フィクションの場合はこの限りではありません。

語り手の歴史と重要性

19世紀に西洋文学において小説が発展する中で、語り手の概念も進化しました。それまでは詩作品が主流であり、語り手と作者が同一であることが多かったのですが、小説が広まるにつれて、語り手の視点が重要な要素となり、特に「信頼できない語り手」という概念も登場しました。物語には、まとまりのある明確な語り手が必要とされ、さまざまな規則が定められました。これにより、語り手は物語の中にのみ存在し、読者や作者との間には越えられない壁（「第四の壁」）があるという考え方が生まれました。

語り手の種類

一人称の語り手

一人称視点の語り手は、物語における登場人物の内面と感情を強調します。この視点は、語り手が自分の経験や感情を直接語ることで、読者が特定のキャラクターに共感しやすくなります。作者がキャラクターの内的世界にふれたい場合、一人称視点が効果的です。

三人称の語り手

三人称の語り手は、物語の全体を見守る存在であり、全知の視点を持っています。この語り手は、複数のキャラクターの心理や出来事を俯瞰し、物語の背景を広く捉えます。特にキャラクターが多く存在する物語において、三人称の視点は効果的です。

複数の語り手

複数の語り手が登場する作品もあり、それぞれ異なる視点から物語を語ります。この場合、読者は誰の視点を信頼するかを考える楽しみが増し、物語に対する理解が深まります。

信頼できない語り手

信頼できない語り手とは、語り手が自身の偏見や限界によって情報を歪める存在です。読者は語り手の言動から彼らの信頼性を判断し、時には語り手の判断を疑う必要があります。例えば、芥川龍之介の『藪の中』の語り手や、ヘンリー・ジェイムズ作品の語り手は、その信頼性が問い直されることが多いです。

信頼できない語り手は、フィクションだけでなく、回顧録や自伝に登場することもあります。ここで、作者自身が事実を歪めることで信頼できない語り手となることがあります。

結論

語り手は物語の中心的な存在であり、様々な形でその役割を果たします。彼らの選ばれ方や構成は、物語の受容に大きな影響を与えます。物語を理解する上で、語り手の特性や信頼性を見極めることが求められます。

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