誤差 (松本清張)

小説『誤差』の紹介

松本清張が1960年に発表した短編小説『誤差』は、温泉宿を舞台にしたミステリー作品です。この小説は、1960年8月7日号の『サンデー毎日』に掲載された後、1961年には短編集『駅路』として文藝春秋新社にて出版されました。また、1962年と2017年にはテレビドラマとしても制作されています。

あらすじ

物語は、夏の終わりが近づくある日、静かな温泉宿「川田屋」に現れた美しい女性、安西澄子を中心に展開します。彼女は都会的な容姿を持ちながらも、他者との会話を避ける冷淡な態度を見せます。三日目に、安西澄子の夫を名乗る長身の紳士、安西忠夫が現れ、二人は合流します。

その後、忠夫は宿を一時離れる際、澄子が熟睡していることを告げて出かけます。しかし、忠夫が宿に戻らない二時間後、澄子の無残な死体が発見されるのです。現場に到着した警察の嘱託医の見解では、澄子の死亡時刻は15時から16時の間と特定されますが、解剖担当の病院長は17時過ぎと異なる見解を示します。こうした不一致は捜査に影響を与え、病院長の見解が後に捜査方針に合致するため、警察は満足することになります。

捜査が進む中、澄子の夫の正体は実は竹田宗一であることが判明します。東京に出張していた山岡刑事が捜査を続けると、竹田の死体が遺書とともに見つかり、事件は容疑者の自殺として一見解決を見たかに思われました。

作者の思索とエピソード

著者の松本清張は、小説の創作にあたって、自身が尊敬する東京監察医務院の吉村三郎博士の経験を参考にしたと述べています。彼は、長年の経験を持ちながらも、様々な反省があることを示唆しています。このように、作品は単なるフィクションではなく、実際の法医学的知見を背景に持っているのです。

テレビドラマ化

1962年版

1962年、NHKは『誤差』を「黒の組曲」枠で放送しました。主演は月丘夢路が安西澄子役を演じ、竹田宗一役には夏川大二郎がキャスティングされました。

2017年版

2017年には、松本清張没後25年を記念した特別企画として、テレビ東京で新たなドラマが放送されました。この版では、村上弘明が山岡慶一郎役、剛力彩芽が伊崎美里役を演じるなど、新しいキャスト陣が揃い話題となりました。

総括

『誤差』は、松本清張の優れたミステリーの一例であり、真実を求める捜査や人間の心理に迫る要素が盛り込まれています。過去に発表された作品が時代を超えて再評価され、改めて映像作品として形を変えて楽しませていることが、彼の作品の魅力を引き立てています。

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