読売新聞の宮崎勤事件に関する捏造事件

1989年、読売新聞は東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件（宮崎勤事件）に関し、犯人である宮崎勤のアジトを発見したという衝撃的な報道を行いました。夕刊一面トップで大々的に報じられたこの記事は、アジトの場所を「奥多摩山中・小峰峠近く」、宮崎家の使用人が住んでいた小屋であると詳細に伝え、警察が多数の有力な物証を押収し、遺体放置場所もアジト内であるとまで報道しました。さらに、宮崎の供述の矛盾や疑問点が全て解明されたと断定し、アジト付近の地図まで掲載する徹底ぶりでした。

しかし、この報道は警察捜査本部によって即座に全面否定され、その内容が全くの誤りであることが判明しました。読売新聞は翌日、虚偽報道に対する謝罪を掲載しましたが、記事が掲載された経緯についての詳細な説明は2ヶ月後まで遅れました。さらに、その検証記事の内容も、「激しい取材競争の中で一線記者が冷静さを失い、断片的な情報を総合する段階で、強い思い込みから不確かな『事実』を間違いのない『事実』と信じ込んだ」という抽象的なものでした。

この事件は、朝日新聞の珊瑚損傷捏造事件や毎日新聞のグリコ・森永事件の犯人取り調べ捏造事件と並ぶ、1989年を代表するマスコミのスキャンダルの一つとされています。しかし、朝日新聞の珊瑚事件の陰に隠れてあまり注目されず、読売新聞は記事を書いた記者の名前や処分内容を明らかにしないなど、事件の全容は未だに解明されていません。

この事件は、報道機関の倫理観や責任、報道のあり方について、改めて考えさせられる出来事です。正確な情報に基づいて報道を行うことの重要性を示す事例として、メディアリテラシーを学ぶ上で重要な教訓を提供しています。

この事件は、雫井脩介の小説『犯人に告ぐ』でも、物語を彩るスパイスとして引用されています。

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