読書する女

『読書する女』（原題：La Lectrice）は、1988年に公開されたフランス映画です。ミシェル・ドヴィルが監督を務め、レイモン・ジャンの同名小説を映画化した作品です。この映画は、1988年のモントリオール世界映画祭でアメリカ・グランプリを受賞し、ルイ・デリュック賞も獲得しました。翌年のセザール賞では、作品賞、監督賞、脚本賞など多くの部門で候補に挙がり、パトリック・シェネが助演男優賞を受賞するなど、高い評価を得ています。

主演はミウ＝ミウが務め、彼女が演じるヒロインは、読書好きで自分の美声を生かし、様々な人々に本を読んで聞かせるというユニークな仕事を始めます。この作品は、単なるコメディに留まらず、ヒロインが現実と物語の世界を行き来する中で、その境界線が曖昧になっていくという、不思議な魅力を秘めています。また、全編にわたってベートーヴェンの音楽が使用されており、作品に軽快なリズムと深みを与えています。

日本では、1988年に開催された「フランス・シネマ・フェスティバル」で初上映され、翌年には単館ロードショーとして公開されました。その際には大ヒットを記録し、ロングラン上映が続くほどの人気を集めました。映画で使用されたベートーヴェンの楽曲は、後に有名になる演奏家たちによって演奏されていますが、サウンドトラック盤はリリースされず、曲名情報も不足していたため、ファンにとっては長らく歯がゆい状況が続いていました。しかし、日本公開前には、映画のサウンドトラック盤ではなく、「映画 読書する女 サウンド・ヴァージョン」というCDが発売され、アルフレート・ブレンデルらの演奏を聴くことができました。

映画の監督・脚本はミシェル・ドヴィル、製作はロザリンド・ドヴィルが担当しました。撮影はドミニク・ルリゴルール、美術はティエリー・ルプルースト、衣装はセシル・バルムが担当しています。音楽はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが使用され、編曲はカンタン・ダマンムが行いました。演奏は、ジャン＝フランソワ・エッセール（ピアノ）、ブリュノ・パスキエ（ヴァイオリン）、エリザベット・バルマス（ヴァイオリン）、ロラン・ピドゥ（チェロ）など、著名な演奏家たちが務めました。

物語は、読書好きのコンスタンスが、ベッドの中で『読書する女』という本を読んでいる場面から始まります。その本の中では、主人公のマリーが自分の美声を生かして読書サービスを提供するというユニークな仕事に挑戦します。しかし、彼女が訪れる家々の人々は、それぞれが一癖も二癖もある個性的な人々ばかりです。下半身不随のマザコン気味の少年にはモーパッサンの「手」を読み聞かせるが発作を起こしたり、精神病院で死んだ作家の本を読むなと医者に叱られたりします。また、ボードレールの『悪の華』が母親に不適切とされたり、離婚して欲求不満の中年社長から体を触られたり、様々なトラブルに巻き込まれます。その一方で、少女に誘われて遊園地に行き、誘拐犯と間違えられたり、盲目の友人の誕生日に本を読まされたり、予測不能な出来事が次々と起こります。そうした中で、マリーは自らの仕事を通じて、人々の心の奥底に潜む感情や欲望に触れていきます。最終的に「朗読者はいなくなった」と恋人が言うのに対し、コンスタンスは「ここからが始まりよ」と答えるラストは、物語の終わりと共に、新たな可能性を示唆します。

関連書籍として、レイモン・ジャン著の『読書する女』が新潮文庫から出版されています。また、映画に関する情報やレビューは、allcinema、KINENOTE、IMDbなどで確認することができます。

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