請求権と自由権

権利の分類：請求権と自由権

哲学や政治学において、権利は大きく分けて請求権と自由権の2つに分類されることがあります。この区別は、アメリカの法学者ウェスリー・ホーフェルドが提唱した概念に由来します。

請求権と自由権の違い

請求権 (Claim Rights)：権利を有する者に対して、他者が何らかの責任や義務を負うことを伴う権利です。例えば、契約に基づいて金銭を請求する権利などが該当します。
自由権 (Liberty Rights)：権利を有する者に自由や許可を与える権利であり、他者の義務を伴いません。例えば、言論の自由や信教の自由などが該当します。

請求権と自由権は、互いに深く関連しています。ある人が何かを行う自由権を持つのは、その行為を禁じる請求権を持つ人がいない場合に限られます。逆に、ある人が他者に対して請求権を持つ場合、その相手の自由権は制限されます。この関係は、義務論理における義務と権利の双対性として捉えることができます。

具体例で考える

例えば、「自由に発言する自由権」を持つことは、発言しても誰からも咎められないことを意味します。しかし、それは他者が自分の発言を助けたり、妨害しない義務を負うことを意味するわけではありません。もし、他者に発言を妨害しない義務を求めるのであれば、それは「自由な発言に対する請求権」を主張することになります。

重要な点として、請求権の主張は必ずしも自由権の主張を意味しません。例えば、私刑を禁止する法律は、私刑を受けない請求権を確立しますが、私刑で防がれるはずだった行為全てを許可するわけではありません。

権利が存在しない世界

もし自由権だけが存在し、請求権が存在しない世界では、あらゆる行為が許可され、禁止される行為は存在しません。反対に、請求権だけが存在し、自由権が存在しない世界では、許可される行為は存在せず、全ての行為が義務または禁止のどちらかに分類されます。

二次的権利：権能と免除権

ホーフェルドは、請求権と自由権に加えて、権能 (Power) と 免除権 (Immunity) という2つの二次的な権利を提唱しました。

権能：一次的な権利を修正する自由権です。例えば、議会が法律を制定し、国民の権利を修正する権限などが該当します。
免除権：一次的な権利の修正から保護される請求権です。例えば、憲法によって、議会が国民の権利を侵害する法律を制定できないようにする権利などが該当します。

権能と免除権は、それぞれ自由権と請求権に包含されると考えることもできます。そのため、自由権と権能をまとめて「能動的権利」、請求権と免除権をまとめて「受動的権利」と分類する論者もいます。

複雑な権利の区分

これらの権利の分類は、特定の財産権など、複雑な事柄を説明する際に役立ちます。例えば、自分のコンピュータを使う権利は自由権、他人が使うことを認める権利は権能、使わせない権利は請求権と考えることができます。さらに、コンピュータの所有者は、これらの権利を保護する免除権を持つ場合があります。

まとめ

権利を請求権と自由権に分けて考えることで、権利の本質や相互関係をより深く理解することができます。また、権能や免除権といった二次的な権利を考慮することで、権利の構造をより詳細に分析することが可能になります。

関連項目

* ウェスリー・ホーフェルド

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