諸井勝之助

諸井勝之助

諸井 勝之助（もろい かつのすけ）は、日本の会計学研究において多大な足跡を残した人物です。1924年（大正13年）2月3日にこの世に生を受け、2018年（平成30年）1月5日に永眠するまでの生涯を、教育者そして研究者として全うしました。東京大学および青山学院大学の両大学から名誉教授の称号を贈られています。

東京府に生まれた諸井氏は、実業家永田甚之助の三男として育ちました。その家系には、母方の祖父に尾高次郎、さらに曾祖父に尾高惇忠と渋沢栄一という、日本の近代化において重要な役割を果たした人物たちの名前が連なります。後に、秩父セメントの社長を務めた諸井貫一氏（遠戚にあたる）の婿養子となり、諸井家の籍に入りました。

学問への道は、旧制武蔵高等学校を卒業後、東京帝国大学経済学部商業科へと進み、1946年（昭和21年）に卒業しました。卒業後、東京大学で研究者としてのキャリアをスタートさせ、1950年（昭和25年）には経済学部の助教授に就任します。その後、1963年（昭和38年）に教授へと昇任し、長年にわたり教鞭を執りました。この間、1983年（昭和58年）には日本経営財務研究学会の会長も務め、学界の発展にも貢献しました。東京大学を1984年（昭和59年）に定年退官した後は、同大学より名誉教授の称号が贈られました。その後も教育への情熱は衰えず、新潟大学経済学部で教授を務めた後、1986年（昭和61年）からは青山学院大学国際政治経済学部で教授として活躍しました。1999年（平成11年）に青山学院大学を退任し、ここでも名誉教授の称号を得ています。

諸井氏の研究は、主に会計学、中でも原価計算や経営財務といった分野に焦点を当てていました。その研究成果は、数多くの著作として発表されています。代表的なものとしては、『原価計算講義』や『経営財務講義』といった大学における講義内容をまとめたものが挙げられます。これらの著作は、当時の学生や研究者にとって貴重な学びの源泉となりました。また、『私の学問遍歴』では、自身の研究人生を振り返っています。単著のみならず、河野豊弘氏や染谷恭次郎氏ら多くの研究者と共同で編著を手がけ、『企業財務ハンドブック』、『現代経営財務論』など、幅広いテーマの専門書を世に送り出しました。さらに、海外の優れた研究成果を日本に紹介することにも力を注ぎ、アメリカ会計協会による『損益分岐点分析』や、J.F.ウェストン、E.F.ブリッガム共著の『経営財務』など、重要な専門書の翻訳も行いました。これらの著作活動や翻訳は、日本の会計学研究の発展と普及に大きく貢献したと言えるでしょう。

長年の教育研究活動における功績が認められ、2000年（平成12年）には勲二等瑞宝章を受章しました。諸井勝之助氏は、その卓越した研究能力と教育者としての情熱をもって、日本の会計学界に確固たる地位を築き上げた人物であり、その業績は今日なお多くの人々に影響を与えています。

主要著作

『原価計算講義』東京大学出版会 1960年-1965年
『経営財務講義』東京大学出版会 1979年
『私の学問遍歴』森山書店 2002年

主要共編著

『企業財務ハンドブック』河野豊弘, 染谷恭次郎共編 丸善 1967年
『経営財務』編著 現代経営学全集 ダイヤモンド社 1975年
『現代経営財務論』若杉敬明共編 東京大学出版会 1984年

主要翻訳

アメリカ会計協会編『損益分岐点分析』山口達良共訳 日本生産性本部 1959年
J.F.ウェストン, E.F.ブリッガム『経営財務』東京大学出版会 1968年-1970年

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