謝世輝

謝世輝（しゃ せいき、1929年3月10日生）は、台湾に生まれ日本で活躍した物理学者です。本名は河津 世輝（かわづ せいき）といいます。

彼は台湾の台南市で生を受け、国立台湾大学を卒業しました。その後、日本へ渡り、名古屋大学大学院理学研究科物理学専攻に進学。原子核物理学を専攻し、1959年には「高エネルギーにおける重陽子の光分解」と題する論文で理学博士の学位を取得しました。

大学院修了後は、東京大学素粒子研究所で研究員として活動しました。教育機関への転身後は、相模工業大学にて助教授、後に教授を務め、物理学の研究・教育に携わります。さらに、東海大学文明研究所の教授としても教鞭を執りました。

物理学者としての専門的なキャリアを築く傍ら、謝世輝は多岐にわたる分野で精力的な執筆活動を展開しました。活動初期には、専門分野である物理学に関連する宇宙や科学技術に関する啓蒙書や児童書を執筆しています。例えば、『宇宙開発』や子供向けの宇宙に関する書籍などを手掛けました。

1970年代に入ると、彼の関心は科学分野から歴史学へと広がります。当時の歴史観が西洋中心になりがちであることに疑問を呈し、ユーラシア文明など、より広範な視点から世界史を捉え直す著作を発表しました。『新しい世界史の見方』や『第三の世界史 西欧中心でない真の世界史』といった著作は、従来の枠にとらわれない歴史観を提示し、多くの読者に新しい視点を提供しました。

そして、1980年代からは、著作活動の主軸が自己啓発分野へと大きくシフトします。潜在能力の開発、願望実現、成功哲学、ポジティブ思考といったテーマに焦点を当て、多数のベストセラーを生み出しました。彼の自己啓発書は、理学博士としての論理的な思考と、哲学や心理学、さらには東洋的な思想をも融合させた独自のアプローチが特徴です。『「願望」はゼッタイかなえられる』、『運命は思い通りに操れる！』、『成功への見えざる法則』、『人間はここまで強くなれる』など、その著作リストは非常に豊富です。特に、ジョセフ・マーフィーやナポレオン・ヒルといった海外の自己啓発家の思想を紹介・解説する著作も多く、これらの思想を日本に広める役割も果たしました。

また、海外の著名な自己啓発書の翻訳も多数手掛けています。ノーマン・V・ピールやロバート・シュラー、マクスウェル・マルツなど、この分野で影響力のある著者の作品を日本に紹介し、自己啓発分野の普及に貢献しました。

謝世輝は、物理学という厳密な科学の世界から、歴史学、そして人間の内面に迫る自己啓発の領域まで、幅広い知識と関心を持ち、それらを融合させた独自の言論活動を展開しました。その多才な活動は、日本の学術界や出版界において、ユニークな存在感を放ちました。

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