讒謗律

讒謗律（ざんぼうりつ）について

讒謗律は明治8年、1875年に制定された日本の太政官布告第110号であり、他人の名誉を毀損する行為に対する処罰を明確に規定するものでした。この法律は、自由民権運動の高まりと共に発表され、政治的背景にも大きく影響を及ぼしました。

沿革

この法律は1875年に公布されたものの、1880年には新しい刑法の施行に伴い消滅しました。全八条から成り立っており、特に第一条は、事実の有無にかかわらず他人の名誉を傷つける行為を「讒毀」とし、他人の悪名を広めることを「誹謗」と明示しています。この内容は、文書や図画を用いて他人を非難する行為に対して罰則を科すことを規定したものです。

内容の詳細

第1条では、他人を誹謗したり讒毀したりする行為について、具体的な文言で禁止が示されています。内容は、「事実の有無を問わず、人の名誉を損なう行為を暴き、これを広めることは讒毀である」とし、「他人の行為を挙げず、悪名を以て広めることは誹謗である」と定義されていました。

さらに、第二条から第五条にかけて、天皇、皇族、官吏、及び一般市民に対する讒毀や誹謗に関して、それぞれ別々の罰則を設けていました。この順序は、罰の重さにも反映され、天皇に対する侮辱が最も厳重に罰せられることが明示されていました。

制定の背景

讒謗律が制定された背景には、当時の政治的な状況が大きく影響しています。当時、多くの人々が自由民権を求めて活動しており、政府や地方の公務員に対する強い批判が寄せられることが多く見受けられました。讒謗律の制定は、政府のためにそのような批判を抑えるために意図されたと考えられています。

特に、当時の政治家である板垣退助は、この法律の制定に前向きであり、最も厳しい法案に賛同していました。彼は、「低俗な誹謗合戦ではなく、正々堂々と意見を戦わせるべき」との姿勢を示しており、実際に自身が進めていた自由民権運動と矛盾するような内容でありながら、この法案を支持したのです。

この姿勢については、「板垣は政府に取り込まれた」との批判もあり、特に讒謗律に反対する立場の東京曙新聞の末広鉄腸は、布告に対する異議を唱え、実際に反対意見を載せました。しかしその結果、彼はこの布告に基づいて裁判にかけられ、禁錮刑にされるという過酷な処遇を受けました。

これにより、讒謗律に基づく逮捕者は1875年の年末時点で7人、翌1876年には40人に達するという事態になりました。これらの出来事は、この法案がどれほどの影響力を持っていたかを物語ります。

現代への影響

讒謗律は、現在の刑法における名誉毀損罪の起源とも言える重要な法律であり、当時の社会における言論の自由と政権への批判の関係性について考えさせられるものとなっています。この法律がもたらした影響は、今なお日本の法制度や社会構造に影響を与え続けています。

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