谷悦子

谷悦子（たに えつこ）は、1944年に徳島県で生まれた日本の児童文学研究者です。長年にわたり梅花女子大学で教鞭を執り、退職後、同大学の名誉教授の称号を授与されました。

教育者としての谷氏の道のりは、1967年に大阪学芸大学教育学部国文科を卒業したことに始まります。大学を卒業後、1967年から1972年にかけて大阪市立津守小学校で教諭として勤務し、児童教育の現場で貴重な経験を積みました。その後、研究活動に専念するため、名称が大阪教育大学に変更された大学院の博士課程に進学しましたが、1976年に課程を途中で修了しています。

大学での本格的な研究・教育活動は、1984年に梅花女子大学に着任したことから展開しました。講師としてスタートし、教育現場での経験と研究者としての知見を活かし、同大学で児童文学の研究と教育に従事しました。1987年には助教授、そして1995年には教授へと昇進。特に文化表現学部において、多くの学生に対して児童文学の魅力を伝え、研究指導を行いました。その長年にわたる教育・研究における功績が称えられ、2008年に梅花女子大学名誉教授に就任しました。

谷氏の研究の中心は、日本の著名な児童文学作家の作品とその世界観にあります。中でも、詩人としても童話作家としても知られるまど・みちお、そして国民的な童話作家である新美南吉に関する研究は、その深遠さと教育現場への応用可能性から高く評価されています。まど・みちおの作品については、詩と童謡の関係性を詳細に分析し、その創作の秘密を探求しました。

このまど・みちお研究の主要な成果として、1988年に発表した著書『まど・みちお詩と童謡』があります。この著作は学術的に高い評価を受け、同年に日本児童文学学会賞の奨励賞を受賞しました。これは、谷氏の研究が日本の児童文学研究界において重要な貢献を果たしたことを示すものです。まど・みちおに関する研究はその後も続けられ、『まど・みちお 研究と資料』や『まど・みちお 懐かしく不思議な世界』といった著作としてまとめられています。また、新美南吉の童話については、文学教育の実践との結びつきを重視した研究を行い、『新美南吉童話の研究 文学教育の実践をめざして』として刊行されています。

さらに、谷氏は作家の阪田寛夫の文学世界を探求した研究や、児童文学の根底に流れるアニミズム思想に関する共同研究など、幅広いテーマで日本の児童文学に対する理解を深める活動を展開してきました。これらの研究成果は、多くの著書や共著として発表され、後進の研究者や児童文学に関心を持つ人々に貴重な資料を提供しています。

谷悦子氏は、小学校教諭としての実践経験と大学での学術研究を融合させ、特にまど・みちおや新美南吉といった日本を代表する児童文学作家の研究において顕著な功績を残しました。梅花女子大学での長年の教育活動を通じて、児童文学研究の発展と次世代の研究者・教育者の育成にも貢献しており、その業績は日本の児童文学研究史において重要な位置を占めています。

著書

『新美南吉童話の研究 文学教育の実践をめざして』くろしお出版 1980（大阪教育大学国語教育学会双書）
『まど・みちお詩と童謡』創元社 1988
『まど・みちお 研究と資料』和泉書院 近代文学研究叢刊 1995
『阪田寛夫の世界』和泉選書 2007
『まど・みちお 懐かしく不思議な世界』和泉選書 2013

共著

『児童文学の源泉としてのアニミズム』田辺欧, 鵜野祐介共著 梅花学園生涯学習センター公開講座ブックレット 2008

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