谷村友一

谷村友一：類まれな審判人生と野球殿堂入り

谷村友一氏は、1927年、アメリカ合衆国ニューヨーク州で生まれました。父親の仕事の関係で、5歳の時に日本へ帰国。旧制同志社中学（現・同志社高校）、同志社大学と進学し、学生時代は二塁手として野球に打ち込みました。大学4年時には主将を務め、リーグ優勝に貢献、最優秀選手にも輝いています。卒業後は極東商事（現・三菱商事）に入社しました。

社会人野球チーム「京都クラブ」でのプレー経験を経て、24歳から関西六大学野球や高校野球で審判員としてのキャリアをスタートさせます。1955年には甲子園球場での審判も経験し、春夏合わせて8回も甲子園に携わりました。この間も三菱商事の社員として働きながら、審判員としての活動と両立させていました。

1959年には念願のセントラル・リーグ審判部に入局。1986年までの間、実に3026試合ものプロ野球公式戦で審判を務めました。オールスターゲーム6回、日本シリーズ11回出場という輝かしい実績を残しています。

審判員としてのキャリアを終えた後も、野球界への貢献は続きます。1987年から1994年まではセ・リーグ審判部指導員として、若い審判員の育成に尽力しました。セ・リーグが審判員の袖番号を導入した際には、指導員として当時一番大きな番号である「32」を着用しました。これは、セ・リーグの指導員が袖番号を持つという前例を作った出来事として、現在も語り継がれています。

審判員時代には、独特のスタイルで知られていました。最後までアウトサイドプロテクターを使用し続け、立ったまま構える姿勢は、谷村氏ならではの審判スタイルとして記憶されています。

引退後も、プロ野球マスターズリーグで審判員を務めるなど、野球への情熱を燃やし続けました。しかしながら2022年7月31日、新型コロナウイルス感染症のため、94歳で亡くなりました。

長年に渡る審判生活の中で、数々の名勝負を裁いてきました。1973年10月22日に行われた、巨人のV9達成をかけた巨人対阪神戦では、試合終了直後にグラウンドに乱入した観客を目の当たりにするなど、緊迫した場面にも数多く遭遇しました。その他にも、中日が巨人のV10阻止を達成した1974年の試合や、ヤクルト対阪急の日本シリーズ第7戦など、歴史に残る試合の数々で審判を務めました。

その功績が認められ、2024年1月18日、公益財団法人野球殿堂博物館の特別表彰委員会において、野球殿堂入りが決定しました。ニューヨーク生まれという異色の経歴、そして長年にわたるプロ野球界への貢献は、後世に長く語り継がれることでしょう。

谷村友一氏の審判人生は、単なる審判としての仕事を超えた、日本のプロ野球史に刻まれた偉業と言えるでしょう。彼の審判への情熱、そして野球界への貢献は、これからも多くの人の心に深く刻み込まれることでしょう。彼の野球殿堂入りは、まさにその功績に対する最高の賛辞と言えるでしょう。

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