谷間の百合

谷間の百合 (Le Lys dans la vallée)

オノレ・ド・バルザックによって書かれた長編小説『谷間の百合』は、「人間喜劇」の「風俗研究」における「田園生活風景」に分類される作品です。物語の舞台は、フランスのアンドル川が流れる美しい谷間。

あらすじ

物語は、復古王政初期を時代背景として、青年貴族であるフェリックス・ド・ヴァンドネスが、薄幸のモルソフ伯爵夫人アンリエットと出会い、惹かれ合う様子を描いています。

家族から疎まれ、孤独な少年時代を送ったフェリックスは、ある舞踏会でアンリエットに一目惚れをします。しかし、アンリエットは彼との間にプラトニックな関係を望み、母性的な愛情をもって接します。彼女はフェリックスに処世術を教え、彼をパリへと送り出すのです。

パリでの生活を送る中で、フェリックスはダッドレー夫人（アラベル）と出会い、恋愛関係になります。そのことを知ったアンリエットは、激しい嫉妬心に苦しみ、心身を衰弱させてついには死を迎えてしまいます。

この小説にはモデルが存在すると言われており、アンリエットはベルニー夫人(fr:Laure de Berny)、アラベルはヴィスコンティ夫人(fr:Frances-Sarah Guidoboni-Visconti)がそれぞれモデルであるとされています。

登場人物

モルソーフ伯爵夫人 (Madame de Mortsauf)
名はアンリエット。ルノンクール家の出身で、クロシュグールドの館の主。ジャックとマドレーヌという二人の子供がいます。
フェリックス・ド・ヴァンドネス (Félix de Vandenesse)
アンリエットに深い愛情を寄せる青年。兄と姉がいます。
ダッドレー夫人 (Lady Dudley)
名はアラベル。イギリス人で、フェリックスの愛人となります。
モルソーフ伯爵
アンリエットの夫。亡命貴族であり、癇癪持ちでトリクトラクを好む人物として描かれています。
ナタリー・ド・マネルヴィル (Natalie de Manerville)
物語の終盤に登場する、フェリックスの現在の恋人です。

『谷間の百合』は、報われない愛、社会的な制約、そして人間の心の葛藤を描いた作品として、今もなお多くの読者を魅了し続けています。

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