豊口協

豊口 協（とよぐち きょう）

豊口 協氏は、1933年4月29日生まれの日本の高名な工業デザイナーであり、教育者としても長きにわたり多大な功績を残した人物です。現在、長岡造形大学および東京造形大学それぞれの名誉教授の称号を有しています。その専門分野は、私たちの日常生活に深く関わる工業製品のデザイン、すなわちインダストリアルデザインです。

経歴

1933年に東京都で生を受けた豊口氏は、1951年に東京都立新宿高等学校を卒業しました。その後、千葉大学工学部で工業意匠を専攻し、1958年に卒業。キャリアの第一歩として松下電器産業株式会社に入社し、技術本部意匠部にてデザインの実務に携わりました。1963年には有限会社豊口デザイン研究所（後の株式会社環境創研）に入社し、デザインコンサルタントとしての活動を開始。1977年には同社の代表取締役社長に就任し、1994年までその職を務めました。また、1975年から2000年3月まで、株式会社コミュニケーション デザインの取締役も兼任しています。

教育分野での貢献

豊口氏のキャリアにおいて、デザイン教育は重要な柱の一つです。1968年、東京造形大学造形学部の助教授に就任し、教育者の道を歩み始めました。1979年には同大学のデザイン学科教授に昇格し、1994年まで後進の指導にあたりました。特に、1984年から1992年までの期間は、同大学の学長として大学の運営とデザイン教育の発展にリーダーシップを発揮しました。1994年には、新たに設立された長岡造形大学の学長に就任し、2004年3月までその基礎作りと発展に尽力しました。同時期には株式会社環境創研の代表取締役会長も務めています（1994年-2007年12月）。長岡造形大学では、1999年に理事長にも就任し、2014年8月までその職を担いました。長年にわたる教育への貢献から、現在は東京造形大学、長岡造形大学双方から名誉教授の称号を贈られています。

デザイン振興活動

豊口氏は、日本のデザイン界全体の振興にも精力的に関わりました。その活動は多岐にわたり、特に、通商産業省（現在の経済産業省）が主催するグッドデザイン商品選定の審査委員を長年にわたり務め（1973年〜1996年3月、中断期間あり）、1984年にはその審査委員長として日本のプロダクトデザインの質の向上に貢献しました。また、日本ディスプレイデザイン大賞の審査委員（1981年）や、国際デザイン交流協会の理事（1983年）、国際デザイン・アオード推薦人、アジア太平洋交流委員会委員長など、国際的な舞台でも活動しました。

さらに、通商産業省の輸出検査及びデザイン奨励審議会委員（1985年-1995年）や、全国学生児童発明くふう展及び全日本教職員発明展の審査委員会委員（1993年-2006年3月）を務めるなど、若年層の発明・デザイン教育支援にも関与しました。新潟県では、IDSデザインコンペティションの審査委員長や、新潟県生活文化創造産業振興会の理事を務めるなど、地域のデザイン振興にも貢献しています。

1995年には通商産業省Gマーク選定制度検討委員会の委員長として、グッドデザイン賞制度の更なる発展に向けた検討を主導しました。日本産業デザイン振興会のグッドデザイン賞審議委員会委員も務め、2004年からは委員長として制度全体の審議に関わりました。また、1999年には宇宙開発事業団（現JAXAの一部）のH-ⅡAロケット名称・シンボルマーク選定委員会の委員長を務めるという、国家的プロジェクトのデザイン選定にも深く関わりました。この他にも、三条市環境審議会委員（2002年）など、多方面での審査や審議に携わっています。

受賞と栄誉

豊口氏の長年の功績は国内外で高く評価されています。1997年にはJIDA（日本インダストリアルデザイナー協会）の勝見勝賞を受賞しました。1999年には通商産業省よりデザイン功労者表彰を受けています。教育分野での国際的な評価も高く、中華民国の大同工学院栄誉教授（1997年）、無錫軽工大学栄誉教授（1999年）、韓国の東西大学校名誉博士（2000年）といった海外からの栄誉ある称号を受けています。そして、日本のデザイン教育及びデザイン振興における多大な貢献に対し、2009年には旭日中綬章を受章しました。

著作・展示

豊口氏は、自身のデザイン哲学やデザイン界に関する知見を多くの著作として発表しています。主な著書には、『IDの世界』（鹿島出版会、1974年）、『Gマーク グッドデザインのすべて』（日本実業出版社、1985年）などがあり、これらはデザインを学ぶ者やデザインに関わる人々にとって重要な参考資料となっています。また、2013年には「80years Celebration 豊口協展 -長岡二十年 こころの旅-」と題した個展が開催され、そのデザイン活動の一端が紹介されました。

工業デザイナーとして実際のデザインを手がける一方で、教育者としてデザイン界を担う後進を育成し、さらにはグッドデザイン賞をはじめとする様々な委員会や組織で指導的役割を果たすなど、豊口協氏は日本のデザイン界の発展にとって欠くことのできない極めて重要な人物と言えるでしょう。

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