豊橋筆

豊橋筆

豊橋筆は、愛知県豊橋市とその近郊（田原市・豊川市など）で生産されている筆です。主に書道用として用いられますが、日本画、工芸品、化粧用など、用途に合わせて数百種類以上の筆が作られています。生産量では広島県の熊野筆に次いで全国第2位ですが、書道家向けの高級筆においては全国の80%を占めており、年間180万本が全国で販売されています。

歴史

豊橋筆の起源は、1804年（文化元年）に遡ります。当時の三河吉田藩（豊橋藩）の藩主が、京都から筆職人の鈴木甚左衛門を招き、藩の御用筆匠としたのが始まりとされています。筆の製造は、下級武士の副業として取り入れられました。

明治時代初期には、芳賀次郎吉が従来の芯巻筆を改良し、水筆（現在の毛筆）の製法を広めました。さらに、その弟子の佐野重作が改良を重ね、多くの弟子を育成するなどして、今日の豊橋筆の基礎を築きました。1976年（昭和51年）には、経済産業大臣によって伝統的工芸品に指定されています。

特徴

豊橋筆は、他の筆と比較して墨になじみやすく、滑らかな書き味が特徴です。この特徴は、特殊な技法である「練り混ぜ」によって実現されています。「練り混ぜ」とは、穂の長さ、太さ、毛の硬さ、弾力などが異なる様々な毛を、水を用いて混ぜ合わせる技法です。この技法により、筆は独特のしなやかさとまとまりを得ます。

豊橋筆の製造工程は、選別、毛もみ、寸切り、練り混ぜ、上毛かけ、仕上げ、刻銘という複雑なもので、全ての工程が手作業で行われます。職人の熟練した技術と丁寧な作業によって、豊橋筆は高品質を保ち、書道家をはじめとする筆の専門家から、その書き味と品質の良さが高く評価されています。

豊橋筆は、その歴史と伝統、そして職人の技によって、日本の書道文化を支える重要な役割を担っています。

参考文献

『ふるさと再発見ガイドブック 知るほど豊橋【その二】』、豊橋市広報広聴課、2009

関連項目

書道
筆
文房具

外部リンク

あいちの伝統工芸品豊橋筆 - 愛知県
伝統的工芸品紹介 豊橋筆 - 伝統工芸青山スクエア

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