豊田利幸

豊田利幸

豊田利幸（とよだ としゆき、1920年5月12日 - 2009年5月15日）は、日本の著名な素粒子論・原子核物理学者です。岐阜県に生まれ、東京帝国大学（現在の東京大学）理学部を卒業しました。彼の専門は理論物理学であり、特に素粒子論と原子核物理学の分野で顕著な業績を残しました。

大学での活動

豊田は、学術の世界で重要な役割を果たしました。立教大学で助教授、教授として教鞭を執り、その後、名古屋大学教養部教授に就任しました。1984年に名古屋大学を定年退官し、名誉教授の称号を得ています。その後も、明治学院大学教授として教鞭を執り、同大学の国際平和研究所所長も務めました。教育者として、多くの学生を指導し、物理学の発展に貢献しました。

核廃絶運動への貢献

豊田は、単なる研究者としてだけでなく、社会活動家としても重要な役割を果たしました。湯川秀樹をはじめとする他の著名な科学者たちと共に、核兵器廃絶運動を積極的に展開しました。核兵器の危険性を訴え、平和な世界を実現するための活動に尽力しました。この活動は、彼の物理学者としての知見と、社会に対する深い責任感の表れでした。

著書と翻訳

豊田は、数多くの著書と翻訳を通じて、自身の研究成果や思想を社会に広めました。著書には、物理学の専門書から、核兵器問題、科学と政治の関係を論じたものまで、多岐にわたります。代表的な著書として、『物理学汎論 第6 光学』、『原子力問答12講』、『核戦略批判』、『核時代における科学と政治』、『核戦略の結末』、『新・核戦略批判』などがあります。また、『物理学とは何か』では、物理学の本質について考察しています。

共編著としては、湯川秀樹、朝永振一郎らと協力して『核軍縮への新しい構想』を執筆し、岩波講座の現代物理学の基礎シリーズにも貢献しました。さらに、太平洋の非核化を提唱した『太平洋の非核化構想』など、核兵器に関する著作を多数発表しています。

翻訳では、クラーク・グッドマンの『原子炉入門』、S.ローゼンタールの『ニールス・ボーア その友と同僚より見た生涯と業績』、アルヴァ・ミュルダールの『正気への道 軍備競争逆転の戦略』など、科学史や軍縮に関する重要な書籍を日本語に訳し、日本の読者に紹介しました。これらの翻訳は、科学的知識の普及に大きく貢献しました。

豊田利幸は、その生涯を通じて、物理学者としての卓越した業績と、平和運動家としての強い信念を貫きました。彼の活動は、科学の発展と社会の平和に貢献する上で、今後も長く記憶されるでしょう。

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