象牙芽細胞

象牙芽細胞（ぞうげがさいぼう）

象牙芽細胞は、歯の内部にある柔らかい組織である歯髄の最も外側、具体的には歯髄と象牙質の境界部分に存在する細胞です。これらの細胞は、歯の硬組織の一つである象牙質を形成する主要な役割を担っています。

歯が発生する初期段階において、象牙芽細胞は、歯の基となる組織である歯乳頭の最も外側の細胞から分化（特定の機能を持つ細胞へと変化すること）して生じます。この分化は、隣接する内エナメル上皮という組織から受け取る特定のシグナル（刺激）によって誘導されます。象牙芽細胞への分化が完了すると、これらの細胞は象牙質の形成を開始します。象牙質は、歯の大部分を占める硬い組織であり、エナメル質の内側に位置して歯髄を保護する役割を果たします。

象牙芽細胞は、特定の病気や大きな損傷などによって細胞自身が死滅しない限り、文字通り歯の寿命が尽きるまで象牙質を継続的に形成し続けるという驚くべき能力を持っています。この活動により、歯の成長期に形成される一次象牙質に加え、歯が完成した後に生理的にゆっくりと形成される二次象牙質、さらに外部からの刺激（う蝕や摩耗など）に応じて防御反応として局所的に形成される三次象牙質（修復象牙質とも呼ばれます）などが生み出されます。象牙質の構造は、形成される時期や環境によって異なり、主に外套象牙質、原生象牙質、二次象牙質、三次象牙質といった種類に分類されます。

象牙芽細胞の細胞体は歯髄側に位置していますが、象牙質の中に向かって象牙芽細胞突起と呼ばれる細長い突起を伸ばしており、この突起の周囲に象牙質が沈着していきます。象牙質内には、この突起が収まっている象牙細管という微細な管が無数に走っており、これにより象牙質は歯髄と交通しています。

ただし、特定の状況下では、象牙芽細胞の存在が問題を引き起こす可能性も指摘されています。例えば、第二次象牙質が形成される際に、象牙芽細胞が誤って象牙質内部に封入されてしまうことがあります。このような象牙芽細胞が埋め込まれた領域は、象牙質の構造が不規則になることがあり、これがう蝕（虫歯）の原因となる細菌が象牙質内部へ進行する際に、通常とは異なる経路を提供したり、病変の拡大を促進したりする要因となる可能性が考えられています。このため、象牙芽細胞の健康状態や機能は、歯の健康維持にとって非常に重要です。

象牙芽細胞の働きや象牙質の形成過程は、歯全体の発生や構造、そしてその健康に深く関わっています。より広範な理解のためには、歯がどのようにして形成されるかの全体像を知ることが役立ちます。

関連項目：
歯の発生

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