豪血寺一族

豪血寺一族

『豪血寺一族』は、アトラスが開発した対戦格闘ゲームのシリーズであり、その一作目のタイトルです。リリース前から、血縁の一族のみが登場する点や、主人公が老婆であること、対戦相手の精気を吸収して若返るという斬新なシステムなどが注目を集めました。

ゲーム内容

初代『豪血寺一族』のゲームシステムは、シリーズを通してほぼ引き継がれています。プレイヤーキャラクターは全員、二段ジャンプと空中投げが可能で、ほぼ全ての通常技を必殺技でキャンセルできます。ダッシュ攻撃はダメージが2倍になるなど、ダイナミックな構成が特徴です。

攻撃側が有利になりすぎないよう、バランス調整としてバックステップ中は無敵、ダッシュ中にダメージを受けるとカウンターが発生するなどの調整が施されています。また、投げ技を含めた単発ダメージは、当時の格闘ゲームと比較して控えめです。これは、広いフィールドでの戦闘と空中戦を重視した設計思想によるもので、空中防御の採用も検討されていました。

一部のステージでは歌が使用されており、開発当初は全ステージでの歌唱を目標としていました（続編の『2』でほぼ実現）。容量の都合で歌が使用できなかったステージについても歌詞は存在し、雑誌記事や家庭用移植版の説明書に掲載されています。また、初代の時点で豪血寺一族の始祖から登場キャラクターの世代までの詳細な家系図が作成されています。

ストーリー・設定

物語の中心となるのは、世界3大財閥の一角である豪血寺財閥です。明治時代から続く一族でありながら、20世紀末までに頭首を務めた者はわずか4名。一族では5年に一度、格闘大会を開催し、その優勝者が次の5年間の頭首を務めるという独特な形式を採用しています。

4代目頭首である豪血寺お梅は、18歳で頭首の座につき、その後60年間もその地位に君臨し続けています。この奇妙な頭首決定戦が始まった背景には、徳川幕府崩壊後の時代、全ての国民が名字を持つことが許された頃に遡ります。

豪血寺の始祖となる新十郎は、母から聞いた父の名「野牛十兵衛」（家系図によれば柳生十兵衛と誤解）を誇りとし、「豪血寺」という名字を名乗ります。そして、「弱き者、豪血寺の名を語るべからず」「豪血寺を継ぐ者は唯一人」という家訓を定めました。

しかし、3代目頭首となった豪血寺お志摩が、その超能力で徳川埋蔵金や油田を掘り当て、財閥を巨大化させると、一族は財産を巡って醜い争いを繰り広げるようになります。お志摩はこれを憂い、新十郎の遺志を継ぎ、5年に一度の頭首決定戦の開催を宣言しました。

本家であるお志摩の血族を除き、多くの一族は既に豪血寺の姓を捨てていますが、頭首の座に就く時のみ「豪血寺」を名乗ることが許されます。一族は豪血寺の名、財産、地位を求め、争い続けるのです。そして、78歳のお梅が14期目の頭首在位を目指す頭首決定戦には、お梅が幼い頃に日本海に流した双子の妹、豪血寺お種の姿もありました。

シリーズ構成

豪血寺一族

1993年11月にアトラスから発売されたアーケードゲームで、海外では『Power Instinct』としてリリースされました。プレイヤーは豪血寺一族の血を引く8人のキャラクターから1人を選び、他の7人を倒し、最終ボスである現頭首・お梅を倒して新たな頭首の座を目指します。主人公はお梅の双子の妹であるお種で、お梅とお種はグラフィックが同じ（色違い）で技も似ていますが、性能は大きく異なっています。

スーパーファミコン版とメガドライブ版が発売されており、後にWiiとWii Uのバーチャルコンソールでスーパーファミコン版が配信されました。アーケード初期バージョンには、外部からのボタン操作でデバッグモードに入れる問題があり、ROM交換が行われました。

豪血寺一族2

1994年10月にアトラスから発売されたアーケードゲームで、海外では『Power Instinct 2』として発売。前作から1年後を舞台としており、お種の優勝で幕を閉じた大会後、お種が失踪したため新たな頭首を決める大会が開催されます。お梅が使用可能キャラクターとして加わり、新たに5人のキャラクターが追加されました。

新システムとして「忍耐メーター」が追加され、ダメージを受けるごとに増加し、最大になると超必殺技「一発奥義」が使用可能になります。また、メーターが最大になると無敵になり、相手を押し返すオーラが発生し、緊急回避としても機能します。前作でお種（お梅）のみが持っていた変身能力を、新キャラクターのうち3人が搭載しています。

多くのステージ曲に歌が採用され、背景キャラクターにステージ曲と同期した振り付けを行わせるなど、音楽面での演出が強化されています。PlayStation版『豪血寺一族2 ちょっとだけ最強伝説』として移植されました。

豪血寺外伝 最強伝説

1995年5月にアトラスから発売されたアーケードゲームで、海外では『Gogetsuji Legends』として発売。お梅の陰謀によりお種が失踪し、新たな頭首に弧空院干滋が就任。干滋がタッグマッチ形式の大会を開催するというストーリーです。シリーズで初めて豪血寺初代頭首の血を引かない人物が登場します。

タッグマッチ形式で、リーダーとパートナーを選択しますが、戦う順番が一般的なタッグ形式とは逆になっています。新システムとして、「迎撃防御」と「ごっつい攻撃」が追加されました。

グルーヴ オン ファイト 豪血寺一族3

1997年5月にアトラスから発売されたアーケードゲームで、日本国外では未発売。『2』から21年後の未来である2015年を舞台に、お種とお梅が結託してタッグマッチ制の頭首大会を開催します。キャラクターデザインが一新され、お種とお梅以外のキャラクターは全て入れ替えとなりました。新キャラクターの造形や世界観は退廃的な印象を持っています。

新豪血寺一族 闘婚 -Matrimelee-

2003年3月21日にプレイモア（現：SNK）から発売されたアーケードゲーム。『豪血寺一族2』の約1年後を舞台に、豪血寺一族が某国のイベントに招待され、王位継承者の結婚相手を探すというストーリーです。数人のキャラクターが新規に追加され、前作までの登場キャラクターは新たにイラストが描き起こされました。

新・豪血寺一族 -煩悩解放-

2006年5月25日にエキサイトから発売されたPlayStation 2用ソフト。『闘婚』のアレンジ移植かつストーリー上の続編で、プリンセス・シシー主催の大会で優勝者に望みを叶えてもらうという設定です。オンラインバトルや煩悩カードシステムなど、家庭版ならではの機能が追加されました。

豪血寺一族 先祖供養

2009年7月24日にピーアイシーから発売されたアーケードゲーム。アーケードシリーズとしては『闘婚』以来の新作となります。新たなキャラクターとして、アンジェラ・ベルテの親族や大山礼児の従姉妹、破鳥才蔵の従兄弟などが登場します。最終ボスは豪血寺初代頭首である豪血寺新十郎です。

レッツゴー!陰陽師

『新豪血寺一族 闘婚 -Matrimelee-』、『新・豪血寺一族 -煩悩解放-』のステージBGMの一つとして使用された楽曲。ニコニコ動画でPVが人気を博し、社会現象となりました。その後、様々なメディアで展開され、現在でも多くの人に親しまれています。

開発

キャラクターの声は、開発スタッフが担当している。『2』では声優の三石琴乃が加わっています。アトラス開発の『グルーヴ オン ファイト 豪血寺一族3』までの作品は、イラストレーターの村田蓮爾がキャラクターデザインを担当しています。

30周年を記念しシリーズの復刻の動きもありましたが、とあるキャラクターがポリティカル・コレクトネスにひっかかることを背景にシリーズの復刻は困難となっています。

BGM

豪血寺一族シリーズは、BGMについて格闘ゲームとしては異例のこだわりを以って製作されています。『2』『外伝』『新』では、BGMに歌詞をつけて歌にするという画期的な試みがなされています。歌詞は大半がシュールな内容で、電波ソングと分類することもでき、曲のジャンルも格闘らしからぬフォークソングや演歌、アイドルポップス、ムード歌謡、合唱にデュエットなどと多岐に渡ります。

もう一度検索