貞操問答

貞操問答

『貞操問答』は、菊池寛によって1934年から1935年にかけて新聞連載された長編小説です。昭和初期を舞台に、没落した南條家の三姉妹、特に次女の新子を中心に、愛憎渦巻く人間関係と激しい運命を描いています。本作は、連載当時から大きな話題を呼び、後に映画化、テレビドラマ化もされました。

あらすじ

物語は、父親の死と会社の倒産により、生活に困窮した南條家から始まります。次女の新子は、家族を養うために音楽学校を退学し、前川家で家庭教師として働き始めます。そこで、前川家の息子・準之助と恋に落ちますが、準之助の妻・綾子の嫉妬により、過酷な嫌がらせを受けることになります。新子は、前川家を追われ、準之助が立ち上げたバー「スワン」のマダムとなります。

しかし、新子の運命はそれだけでは終わりません。前川家の会長である洋匡の愛人であった松奴と瓜二つであったことから、洋匡に目をつけられ、準之助の嘘の証言により、洋匡殺害事件の容疑者として逮捕されてしまいます。実刑判決を受けた新子ですが、謎の人物・王泰三によって保釈され、中国に渡ります。2年後、リー・リーフォアと名前を変え、復讐のために帰国、バー・スワンを買い取り、「ニュー・スワン」として再オープンさせます。復讐を誓いながらも、新子は準之助への愛を再燃させていきます。物語は、新子の復讐と愛、そして隠された過去を軸に展開していきます。

登場人物

主要人物

南條新子：本作の主人公。才色兼備で芯の強い女性。運命に翻弄されながらも、復讐を遂げようとするが、愛に揺れ動く。
前川準之助：前川貿易商会の社長。紳士的で優しいが、妻の綾子には頭が上がらない。新子と恋に落ちるが、保身のために新子を裏切る。
前川綾子：準之助の妻。嫉妬深く、わがままで卑劣な性格。新子を徹底的にいじめ抜く。

南條家

南條圭子：新子の姉。女優を目指しており、野心家な一面も。
南條美和子：新子の妹。計算高く、わがままな性格。姉の恋人であった美沢を奪う。
南條聡子：三姉妹の母。涙もろく、押しに弱い性格。新子のことを心配している。

前川家とその関係者

前川路子：綾子の異母妹。新子の同級生で、新子を前川家に紹介した人物。準之助に特別な感情を抱いている。
前川洋匡：前川貿易商会の会長。昔の愛人である松奴に瓜二つの新子を気に入る。
木賀逸郎：前川家の遠い親戚。誰にでも優しい。
杉山仙吉：前川家の運転手。以前は南條家の運転手をしていた。新子に特別な感情を抱いている。

その他

美沢直巳：新子の元恋人。バイオリニスト。新子との縁談が進まない中で美和子の誘惑に負ける。
王泰三：謎の人物。新子を保釈し、中国に渡らせる。

テレビドラマ

2005年にはTBS系列でテレビドラマ化されました。愛の劇場枠で放送され、全45話で構成されています。ドラマ版では、原作の複雑な人間関係と愛憎劇を忠実に再現し、ドロドロとした展開が話題を呼びました。

映画

本作は過去に映画化もされており、そちらも好評を得ています。

作品の魅力

『貞操問答』の魅力は、複雑に絡み合う人間関係と、主人公の復讐劇です。登場人物それぞれの欲望や嫉妬が渦巻き、先の読めない展開が読者を惹きつけます。また、昭和初期の時代背景の中で、女性たちがどのように生きていたのかが描かれており、社会風俗を知る上でも貴重な作品です。

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