貧乏人は麦を食え

「貧乏人は麦を食え」とは

1950年12月7日、池田勇人当時の大蔵大臣は、参議院予算委員会において米価の高騰に関する質問に対し、物議を醸す発言をしました。この発言は、貧困層への配慮を欠いたものとして広まり、多くのメディアに取り上げられました。池田の言葉は、参議院での質疑応答の中で「貧乏人は麦を食え」と伝えられ、その後の報道においても大きな注目を集めることとなります。

発言の背景と議論

この日の委員会では、米価が急騰していたため、木村禧八郎議員が政府に対しその見解を求めました。池田は大蔵大臣として応答し、当時の経済状況を踏まえて米の不足を嘆く発言をしたのですが、これが「貧乏人は麦を食え」として取り上げられ、騒然とした委員会の場でした。顧みれば、池田の発言は他の部分も含めて聞けば誤解が生じにくいものだったにもかかわらず、切り取られて報道されたために、その誤解が助長されたのです。

政治家の発言は常に scrutiny を受けますが、この事例は特に多くの批判を集めました。いくつかの新聞はその後、「またやった！」と自社の報道を喜び、池田叩きのネタとして取り上げました。このように、彼の言葉はマスコミによって過剰に表現され、人々の心に強く残ることになったのです。

発言の解釈と影響

後に池田勇人の秘書官であった大平正芳は、池田の言葉の選び方に注意を促しつつも相手に理解を示しました。実際、「米が足りなければ、ウドンとか麦で我慢するほかない」という意図だという解釈もありました。池田の次女、池田紀子もまた、父の発言の趣旨を「今は苦しいが、将来はみんなが白いごはんを食べられるように頑張ってほしい」というメッセージだったと語っています。

さらに作家の瀧澤中は、池田の発言には無理せず倹約する程度の意図しかなかったと述べていますが、この言葉は「貧乏人は麦を食え」という形で独り歩きしてしまったのは事実です。

後世の用例

この発言は、その後もしばしば引用されることとなります。例えば、2022年にロシアのウクライナ侵攻が起こり、世界的に穀物価格が高騰した際には、「貧乏人は麦を食え」という言葉が再び注目を浴びました。日本政府が小麦の価格を上昇させた結果、大手製粉会社が業務用小麦粉の値上げを発表する中で、メディアはこの言い回しを用いて再び議論を呼び起こしました。

まとめ

「貧乏人は麦を食え」という言葉は、当初の発言の文脈を無視され、特に貧困層に厳しいメッセージとして受け取られました。政治における言葉の影響力とその扱われ方、この発言はそれを象徴する事例とも言えるでしょう。発言そのものの意図や背景を理解することで、より正確な評価がなされることを願います。

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